―第27章― 千夏が6月を生き永らえる為の隼人の「不安」
今月、死神から出されたミッションは西川優太という行方不明者探しだ。
死神からその妻の家を紹介してもらい、シエルヴィア島にいる可能性が高いというところまでは掴めた。
その女性からその島までの道のりが書かれた地図を受け取り、来週の土曜日に行ってみることにした。
その島は遥か彼方の碧き空に浮かぶ霧に包まれた孤島であり、地図には載っているものの辿り着くのは困難とされている。
その理由は、他の生物に危害を加えないように下界で死んだ有毒生物が隔離された島だからだ。
死者の都では既存の通り、下界で死に至るような怪我を負ったとしても寝込めば治るが、やはりそれにも限界があり、回復せずに2度負ってしまうと、魂が消滅する。
つまり、輪廻転生することなく、跡形もなく消えるという事で、俺達生者でもその条件に該当する。
1度目は寝れば免れるとはいえ、少なからず、死の確率があるという事だ。
それを知らされた時は恐怖が走ったが、冷静になって考えてみると下界で生きていること自体、シエルヴィア島で死ぬ確率よりは低いが、死ぬ確率は十分にあるのだった。
ミッションを達成するための壁にしては丁度いい、何なら小さい位の条件なのかもしれない。
とは、言っても恐怖は拭えない。
一応、死に至るような状況が起きた場合にその個人だけでも避難できるよう、寝袋と救急箱を用意して、9日金曜日の俺は布団に潜った。
翌日の朝5時、部活動のテニスの地区大会が近いこともあり、早起きをしてマラソンに出かける。
去年は全国準優勝だったし、正直、地区大会なら多分、勝てると思う。
ただ、呆気なく負けた自分を咄嗟に想像してしまって怖い。
居ても立ってもいられなくなって、走る。
走っていることの根本はその恐怖がある。
余裕ぶって努力せずに負けるよりはマシだし、毎回のように怖がって情けないけど、そのせいで練習を欠かさずできる。
そんな風にいい方に捉えておいて、今日もまた走る。
7時になったところで、生地の分厚い長袖長ズボンの洋服に着替えて、待ち合わせ場所へ向かった。
空は相変わらず分厚い鉛色の雲に覆われている。
その空は一体俺達に何を予感させているのか。




