―第18章― 千夏と未知を発見する為の想空の「探訪」
通りかかった飲食店で僕達は5人前のチーズフォンデュを頼んだ。
人参やジャガイモ、ブロッコリー、バケット。
様々な具材を真っ白く伝っていくチーズ。
味が濃いめで美味しい鎌倉野菜の特徴と濃厚なチーズも相まって絶品だった。
一体、この料理は誰が初めに作ったのだろうか。
スイス発祥という事は有名だけど、最初に作った人までは調べたことがなかった。
気になる。
興味が湧く。
そうなると、止められない。
一度、気になりだすとその疑問が解決するまで頭の中はそれでいっぱいで、何を言われても、それは離れてくれない。
だから訊く。
けれど、それをすると、空気を読めない奴という白い目で見られる。
僕だって、そう思われたくてやっている訳じゃない。
ちょんちょんと隣の理恵の背中を叩いた。
一番知っている可能性が高く、千夏のタブレットを持っているから。
理恵は驚いて肩をビクッと振るわせてからこちらを向き、「?」の表情を浮かべる。
「チーズフォンデュって、誰が最初に作ったの?」
他の人には聞こえないように小声で囁く。
理恵は一旦フリーズして、軽く首を振った。
分からないという意味だろうか。
「どうした。理恵?」
タブレットの中の千夏が僕達2人の会話を心配そうに眺めている。
「えっと、想空の疑問で」
理恵が小さく呟くと、千夏は「お。なになに?」と、著しく興味を示してくれた。
その千夏の反応に理恵は胸をそっとなでおろす。
「隼人。チーズフォンデュ、最初に誰が作ったのか知ってる?」
そんなことしたら引かれる、白い目で見られる。
僕の好奇心なんかでこの空気を崩しては駄目だ。
「ん?誰だろうな」
けれど、隼人は何でもない事のようにバケットを咥えながら考え始めた。
「そちら、チーズフォンデュの始まりには色々な説がございます。有力なものと致しましては、古代ギリシャの詩人ホメロスが書いた叙事詩に登場していたというもの、アルプス地方で硬くなったパンを美味しく食べるために農家さんが考えたというものですかね」
隣の席のオーダーを取っていた店長さんらしき人が、僕達の話を盗み聞きしていたのか、詳しく説明してくれた。
「なるほど」
タブレット越しの千夏が呟くと、店長さんは目を見開いて驚く。
けれど、そういうものと納得したのか、「どんな場所を見回ったんですか?」と僕達に質問した。
「数カ月前に行った校外学習のリピート旅みたいな感じで、浄智寺と銭洗弁天に行きました」
隼人がたゆみのなく答える。
「いいですね。友達同士でリピート旅というのも」
店長さんは優しく温かく微笑んだ。
「私が入院生活で行けないので、みんなが我儘に答えてくれて」
「そうなんですね。素敵なご友人関係ですね」
丁寧に一音一音、優しく象られていく音声が店内に響いた。




