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―第13章- 疎外感を恐れる為の理恵の「優柔」

「うーん。じゃあ、体験系ってことで、銭洗弁財天とか?」

 観光スポットが続々と決まってしまう。

 心に行きたい願望を隠し持ったまま、くよくよして私は1か月前の校外学習を終えた。

 行きたいと思っていた場所、けれども拒否されるのが怖くて、口に出すことができなかった。

 それでも、このメンバーなら、拒否されることも引かれることもきっとない。

 言うべきか、言うまいか。

 いや、拒否されることも引かれることもないのは学校の班だって、同じ。

 だけど、言えなかったのは多分、自分の一言で気まずくなるのが怖かったから。

「理恵は?どっか、行きたいところある?」

 隼人が気を使って、訊いてくれる。

 普通はこんな時、言う以外の選択肢を考えることはないのだろう。

 言わないことによる利点は何もないし、否定もされない。

 頭ではそう分かっていても、手間取ってしまう。

「理恵は色んなスポット詳しいでしょ。良いとこ教えてよ」

 千夏の声が耳に響いて、周りの景色が明瞭に変わっていく。

 病気の千夏にすら気を使わせた情けなさ、それでも心がスッと照らされて、行きたい場所を口に出した。

「浄智寺。健康と運勢アップのご利益とかがあって、その…」

 言い出しても、作文では流れるように出てくる言葉が、会話だとすぐに途切れて空気に掻き消される。

「お。それで、千夏の病気が快復するかもな」

 飛鷹がそう言ってくれた。

「いいな。それで決まりだな」

 千夏が紙に「浄智寺」の名を書き込み、示し合わせたように微笑みが投げられる。

 ありがたい。

 何度、そう思ったか分からないほどに千夏には感謝している。

 千夏に思いっきり楽しんでほしいと、心の底から思った。


 隼人に頼まれて、話し合いで決まったスポットを効率よく回れるように日程表を練っていく。

 7時、三島駅出発の16時45分解散。

 三島駅、新幹線、北鎌倉駅、浄智寺、ハイキングコース、銭洗弁天、昼食、長谷寺、鎌倉大仏、長谷駅、鶴岡八幡宮、小町通、鎌倉駅、新幹線、三島駅の順で回っていくこと、それぞれの施設の魅力や拝観料を記載したメモツールのスクリーンショットを連絡アプリに送信する。

 パシュという送信音が軽快に響き、スマホと長時間向き合ったせいで凝った首元や肩を回した。

 一息息を吐いて、肩の力が抜けていった時、同じくパシュッという音が室内に太く木霊した。

 連絡アプリを開くと千夏からの返信。

「ごめん。話を進めてもらったのに申し訳ないけど、鎌倉の件無かったことにしてもらえないかな。ごめん」

 驚きに軽く声が漏れた。

 え。

 終始謝りの姿勢で、申し訳なさが伝わってくる。

「何かあったの?」

 隼人が即座に反応を見せるが、未だにその返信はついていない。

「ごめん。後で詳しく話すから」

 そう、送られてきてから何を送っても、千夏の返信はなかった。


 私が何かやってしまったのだろうか。

 いや、この日程表は何度も確認したし、不備はないはず。

 それに、もし不備があるのなら千夏は直接言ってくれるはずだ。

 でも、そうじゃないのなら、どうして千夏は止めにするように言ったのだろう。

 心の中のわだかまりは絡まったまま、解けなかった。



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