―第109章― 大切なものを失わない為の理恵達の「神力」
死神の身体が本物の神に勝るとも劣らない威光を放った。
視界を焼き尽くすほどの光源。
足先から胴、そして指先。
中枢神経から末梢神経。
温かな液体が静かに満ちていくように、身体の空洞を僅かたりとも残さず満たしていく。
隕石の輝きにも似た光が死神の身へ降臨した。
闇すら退けるほどの強烈な威光となり、世界を白く染め上げていく。
私を殴っていた大男すらその光に目を奪われ、動きを失っている。
千夏の小さな頭に死神の温かく、清らかな手が優しく触れた。
言葉を失った千夏に爽やかな笑顔を向けて、手を差し伸べる。
「死神の権限、第2項。死神の輪廻転生を代償に生者に100年の寿命の授与が可能」
その声は空気の奥底から湧き上がり、心に触れた。
「その権限を発動する」
死神は高らかと宣言し、旋風が巻き起こる。
一言、落ちるたびに空気が震え、世界の重心が揺らぐ。
死神に触れられた千夏までもが凄まじい光を放ち、静謐な空気を纏い出す。
威光に満ちた体つきのまま、死神は子供のような溌剌と無邪気な笑いを向けた。
「死神さん。待って、行かないで下さい。私はまだ教えてもらいたい事が、死神さんの想いを引き継ぎますから、どうか」
涙ながらに懇願する西川さんに手を差し伸べて、柔らかく母性に満ちた微笑みを渡す。
「じゃあ、私の後継は西川に譲るとするかな」
漆赤の染料に浸されていた大気に色鮮やかな花が惑う。
緩やかに流れていく川のように神秘を有した風は頬を薙いでいく。
死神さんは本物の神よりも神らしく、最高に人間らしかった。




