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109/112

―第109章― 大切なものを失わない為の理恵達の「神力」

 死神の身体が本物の神に勝るとも劣らない威光を放った。

 視界を焼き尽くすほどの光源。

 足先から胴、そして指先。

 中枢神経から末梢神経。

 温かな液体が静かに満ちていくように、身体の空洞を僅かたりとも残さず満たしていく。

 隕石の輝きにも似た光が死神の身へ降臨した。

 闇すら退けるほどの強烈な威光となり、世界を白く染め上げていく。

 私を殴っていた大男すらその光に目を奪われ、動きを失っている。

 千夏の小さな頭に死神の温かく、清らかな手が優しく触れた。

 言葉を失った千夏に爽やかな笑顔を向けて、手を差し伸べる。

「死神の権限、第2項。死神の輪廻転生を代償に生者に100年の寿命の授与が可能」

 その声は空気の奥底から湧き上がり、心に触れた。

「その権限を発動する」

 死神は高らかと宣言し、旋風が巻き起こる。

 一言、落ちるたびに空気が震え、世界の重心が揺らぐ。

 死神に触れられた千夏までもが凄まじい光を放ち、静謐な空気を纏い出す。

 威光に満ちた体つきのまま、死神は子供のような溌剌と無邪気な笑いを向けた。

「死神さん。待って、行かないで下さい。私はまだ教えてもらいたい事が、死神さんの想いを引き継ぎますから、どうか」

 涙ながらに懇願する西川さんに手を差し伸べて、柔らかく母性に満ちた微笑みを渡す。

「じゃあ、私の後継は西川に譲るとするかな」

 漆赤の染料に浸されていた大気に色鮮やかな花が惑う。

 緩やかに流れていく川のように神秘を有した風は頬を薙いでいく。

 死神さんは本物の神よりも神らしく、最高に人間らしかった。


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