第七話「宮廷の風向き」
風向きが変わった。
皇帝の体調が、優れなかった。
後宮全体が、静かに緊張した。
跡継ぎの問題が、ざわめき始めた。
晴琉に、呼ばれた。
後宮の外の、王府へ来るよう、使いが来た。
美那は、王府へ行った。
広かった。
後宮より、広かった。
しかし、なぜか、後宮より静かだった。
人が少なかった。
晴琉は、庭にいた。
池を見ていた。
「来てくれましたね」と晴琉は言った。
「参りました」と美那は言った。
「座ってください」と晴琉は言った。
格式ばらずに言った。
二人で、池のほとりに座った。
「星を読んでほしいんです」と晴琉は言った。「今後のことを」
「皇位のことですか」と美那は言った。
晴琉は、少し驚いた顔をした。
「分かりましたか」
「星を読まなくても、分かります」と美那は言った。「今の後宮の空気を読めば」
「俺は、皇位を望んでいません」と晴琉は言った。「しかし、周りがそうさせようとする動きがある」
「知っています」と美那は言った。
「星は、何と言っていますか」
美那は、空を見た。
昼間だった。
星は見えなかった。
しかし、読めた。
「あなたの星は、権力を望む星ではありません」と美那は言った。「あなたが皇位に就いても、長くは続かない星です」
「では、避けた方がいい」
「あなたらしくない道は、星が拒みます」と美那は言った。
晴琉は、池を見た。
「あなたに言われると、信じられます」と言った。
「なぜですか」
「あなたは、俺に都合の良いことを言わないから」と晴琉は言った。
池に、風が吹いた。
水面が、揺れた。
(第七話 了)




