第六話「星の嘘」
美那は、一つだけ嘘をついていた。
皇后に、「王爺と私の星は交わる星ではない」と言ったことだ。
本当は、交わっていた。
珍しいほど、強く交わっていた。
祖母に教わった星の読み方の中で、これほど強く交わる星を、美那は見たことがなかった。
しかし、言えなかった。
言えば、後宮を追い出されるかもしれなかった。
あるいは、晴琉が困ることになるかもしれなかった。
美那は、天窓から星を見ながら考えた。
星は、可能性を示すだけだ。
選ぶのは、人間だ。
自分は、何を選ぶべきか。
扉を叩く音がした。
晴琉だった。
「また来ました」と言った。
「また来ましたね」と美那は言った。
「追い返しますか」
「追い返しません」と美那は言った。「どうぞ」
晴琉は入ってきた。
天窓を見上げた。
それから、美那を見た。
「何を考えていましたか」と聞いた。
「星のことを」と美那は言った。
「何が見えましたか」
美那は、少しの間、迷った。
「嘘をついていました」と言った。
「何の嘘を」
「皇后様に、あなたと私の星は交わらないと言いました」と美那は言った。「しかし、本当は交わっています」
晴琉は、美那を見た。
「なぜ嘘をついたんですか」
「追い出されると思ったので」と美那は言った。
「正直ですね」と晴琉は言った。
「星読みは、正直に言わなければなりません」と美那は言った。「……遅くなりましたが」
晴琉は、少し笑った。
「星が交わるというのは、どういう意味ですか」
「縁がある、ということです」と美那は言った。「深い縁が」
「それは、良いことですか」
「良いことだと、思います」と美那は言った。「ただ、選ぶのは人間です」
二人は、星を見た。
(第六話 了)




