第三話「夜の天窓」
その夜、美那は天窓から星を見ていた。
日課だった。
星を読むためではなく、見るために見ていた。
祖母に教わった。
「星を読む前に、まず見なさい。何も考えずに、見なさい」
祖母はそう言っていた。
コンコン、と扉を叩く音がした。
こんな夜中に、誰かと思って開けると、晴琉がいた。
「驚きましたか」と晴琉は言った。
「驚きました」と美那は言った。「王爺が、夜中に星読みの部屋を訪ねることは、普通ではありません」
「普通ではないですね」と晴琉は言った。「しかし、あなたの部屋に天窓があると聞いて」
「天窓が」
「星が見たかった」と晴琉は言った。「俺の部屋は、見えないので」
美那は、少しの間、晴琉を見た。
それから、部屋に招き入れた。
晴琉は天窓を見上げた。
しばらく、黙って見ていた。
「きれいですね」と、やがて言った。
「きれいです」と美那は言った。「毎晩見ています」
「毎晩」
「星は、毎晩違います」と美那は言った。「少しずつ動いています」
「動いているんですか」
「ゆっくりと、動いています」と美那は言った。「同じ星空に見えても、毎晩違う」
晴琉は、星を見たまま言った。
「あなたは、星を読む時、何が見えるんですか」
「その人の、これからが、少し見えます」と美那は言った。「少しだけ」
「俺のこれからも」
「少し、見えます」と美那は言った。
「どんな未来ですか」
美那は、晴琉を見た。
「良い未来です」と、やがて言った。「ただし、あなた次第です」
「俺次第」
「星は、可能性を示すだけです」と美那は言った。「選ぶのは、人間です」
晴琉は、また星を見た。
二人で、しばらく、星を見ていた。
(第三話 了)




