第二話「王爺のこと」
男の名は、晴琉といった。
皇帝の弟だった。
王爺の称号を持っていた。
二十八歳だった。
後宮には、用事があれば入ることができた。
皇帝の弟である晴琉は、時折、皇后に挨拶に来ていた。
美那が、また廊下で晴琉を見かけたのは、五日後だった。
今度は、立ち止まって話せる状況だった。
晴琉の方が、声をかけてきた。
「あなたが、新しい星読みですか」と言った。
「そうです」と美那は言った。「美那と申します」
「俺は晴琉です」と男は言った。
名乗り方が、気さくだった。
王爺にしては、格式ばっていなかった。
「読んでもらえますか」と晴琉は言った。
「どのようなことを」
「俺の運勢を」と晴琉は言った。「最近、良くない気がするので」
美那は、晴琉を見た。
顔を見た。
目を見た。
三日前にすれ違った時に、既に読んでいた。
「お生まれはいつですか」と美那は聞いた。
晴琉が答えた。
美那は、少しの間、考えるふりをした。
「運勢は、悪くありません」と美那は言った。「ただ、今年の後半は、予想外のことが起きやすい星回りです」
「予想外のこと」
「良いことも、悪いことも」と美那は言った。「予想していなかったことが、起きます」
晴琉は、少し笑った。
「星読みらしい言い方ですね」と言った。
「そうですか」と美那は言った。
「当たり障りがない」と晴琉は言った。「もっと、はっきり言えませんか」
美那は、晴琉を見た。
「はっきり言うと」と言った。「今年の後半、あなたは誰かに会います。その出会いが、あなたの人生を変えます」
「誰に会うんですか」
「それは、星にも分かりません」と美那は言った。「人の縁だけは、星も予測できないので」
晴琉は、美那を見た。
「面白い星読みですね」と言った。
(第二話 了)




