第8話:外部からの不正アクセス(侵攻)
学術都市の検閲官たちが、ゼノンの渡した「お問い合わせ石板」を囲んで「これは歴史を覆す記述言語だ……!」と大騒ぎしているのを尻目に、ゼノンはラボの奥でリセと昼食をとっていた。
「ゼノンさん、表の人たち、石板を拝んでいますよ……?」
「放っておきましょう。ただのインターフェースですから。それよりリセ、学術都市の『共有データベース(図書館)へのアクセス権、確保できしたよ。これで君の魔導書のファクタリングも最終段階だ」
ゼノンが指をパチンと鳴らすと、空中に巨大なホログラム・ディスプレイが展開される。
そこには、世界の魔力流がリアルタイムで可視化されていた。
「……ん?王国の座標に、赤いアラートが出てますね」
ディスプレイの一部が、激しく点滅している。
かつてゼノンが守っていた王国の国境線。そこを、隣国である『ガルドア魔導帝国』の軍勢が、まるで紙を破るかのように蹂躙していた。
「あ……。結界が完全にダウンしてる。帝国側の攻撃プログラムが、王国のレガシーな防衛システムを完全に食い破ってますね」
「そんな……!いくらなんでも早すぎませんか!?」
「僕がいれば、敵の攻撃をパケット単位で分析して、一秒ごとに『パッチ』を当てて無効化してましたからね。今の王国には、バグだらけの古いマニュアルを読み上げることしかできない連中しかいない。……ほら、メインサーバー(王宮)が『DDos攻撃』を受けてフリーズした」
画面の中で、王都を象徴する光の柱が、力なく消えていく。
その頃、王国最前線。
勇者レオンは、絶望的な光景を目にしていた。
帝国軍が放つ『術式爆弾』に対し、味方の魔導師たちが防御魔法を唱えるが、そのたびに「実行エラー」が発生して魔法が霧散してしまうのだ。
「なぜだ!なぜ魔法が発動せん!予備の魔力タンクを開けろ!」
「ダメです!タンクのパスワードが、ゼノンにしかわからない形式に書き換わっていて……物理的に破壊しようとすると自爆するように設定されています!」
「あのアマチュア野郎がぁぁッ!!」
レオンの叫びは、帝国の魔導砲の爆音にかき消された。
自分たちが「誰でもできる仕事」と侮り、追い出した男が、実は帝国のあらゆる攻撃を「未然にデバッグ」していた唯一の防波堤だったのと、彼らは今さら、その血と炎の中で理解し始めていた。
一方、ゼノン・ラボ。
「……さて。王国はもう『詰み』ですね。修復コストが資産価値を上回りました(赤字確定)。リセ、お茶のおかわりを。これからは帝国軍の攻撃パターンを分析して、僕たちの拠点のファイアウォールをさらに強化するデータにさせてもらいましょう」
ゼノンは、滅びゆく故国の映像を「エラーログ」として淡々と処理しながら、新しいコードを書き込み始めた。
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