第7話:スパムメールはゴミ箱へ
ゼノンが構築した拠点『ゼノン・ラボ』が稼働を始めて三日。
学術都市の魔導師たちは、異常な事態に気づき始めていた。都市全体の大気中魔素が、ある一点に向かって恐ろしいほど整然として流れていくからだ。
「ゼノンさん、表に学術都市の検閲官の人たちが来ています……。その、屋敷の魔力出力が規定値を超えてるって……」
リセがおどおどしながら報告に来るが、ゼノンはマルチモニターに向かったまま振り返りもしない。
「ああ、魔力の最適化(最適パケット送受信)をしてるだけですよ。今の都市のインフラはノイズが多すぎる。……それよりリセ、これを見て下さい」
ゼノンがモニターの一つを指差す。そこには「重要・至急」と赤字で点滅するメッセージが、何百件も溜まっていた。
「……これ、全部王国からの通信ですか?」
「ええ。勇者レオンと、あの無能な長官からですね。『戻ってきてくれ』とか『条件を三倍にする』とか。中には『これは王命だ、拒否すれば反逆罪だ』なんていう、脅迫まがいの古いプロトコルまで混じっています」
リセは顔を強張らせるが、ゼノンは無造作に右クリックで全選択した。
「全件、迷惑メールフォルダ(ブラックリスト)に移動。ついでに、王国からの通信パケットを物理的に遮断するフィルターをかけました。……よし、これでスッキリした」
その頃、王国の通信室では、魔導師たちが絶望に暮れていた。
「だ、めです!送信したメッセージがすべて『宛先不明(User Not Found)』で返ってきます!拒絶されています!」
「馬鹿な!王の親書だぞ!?物理的にありえん!」
レオンが机を叩いて怒鳴るが、もはや彼らの声は、ゼノンの世界の「ファイアウォール」すら超えられない。
一方、ゼノンの屋敷の門前。
押し寄せた学術都市の権威ある魔導師たちが、ゼノンの張った「玄関のセキュリティ」に手を焼いていた。
「な、なんだこの結界は……!?物理的な干渉をすべて『演算ミス』と処理し、無効化してくるだと!?」
「ありえん、理論が高度すぎて解読できん!誰だ、ここに住んでいるのは!」
ガチャリ、と無造作に扉が開く。
出てきたのは、眠たげな目を擦るゼノンだった。
「騒がしいですね。今、大規模なアップデート(世界の再定義)の最中なんです。苦情なら、こちらの『お問い合わせフォーム』に魔力を流し込んでおいてください。……あ、文字数制限は140文字以内でお願いしますね」
ゼノンが差し出したのは、単なる石板。だがそれは、学術都市の最高峰の知性が束になっても理解できないほど、美しく整理された「魔導回路」の塊だった。
「……君。その回路、まさか一人で書いたのか?」
検閲官のリーダーが震える声で問う。
「いいえ。僕が書いたのは『自動生成』の仕組みだけです。あとはシステムが勝手に、一番賢い形に書き換えてくれるんで」
学術都市の常識が、一人の「元・システム管理者」によって、ガラガラと音を立てて崩れ去った瞬間だった。
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