第6話:学術都市のクリーンインストール
学術都市『アルカ・アカデミア』。
世界中の魔導師が集まり、大気中の魔素濃度が世界で最も安定していると言われる、エンジニアにとっては最高級のデータセンターのような街だ。
「つ、着きました……!本当に半日で着いちゃうなんて……」
馬車から降りたリセが、足元をふらつかせながら街の全景を見上げる。
そこには、幾何学的な模様が刻まれた白い塔が立ち並び、空には魔導師たちの移動用ボードが飛び交っていた。
「悪くない環境だ。大気の帯域幅も広いし、これなら僕の最新OSをフルスペックで回せる」
ゼノンはさっそく、街の外れにある「幽霊屋敷」と噂される廃ビルを格安で買い取った。
かつては有名な魔術師の研究所だったらしいが、内部の魔力回路が暴走し、誰も住めなくなった事故物件だ。
「ゼノンさん、ここ……空気が重くて、嫌な予感がします。呪いの魔力があちこちでショートしていて……」
「呪い?いいえ、ただの『管理ミス』ですよ」
ゼノンは建物の中心にあるメイン制御盤の前に立つ。
そこには、過去の住人たちが継ぎ足し続けた、グチャグチャに絡まり合った魔力回路が剝き出しになっていた。
「うわぁ……。ひどいレガシーコードだ。ドキュメントも残さずに、その場しのぎのパッチ(呪い)を当てまくるからこうなるんだ。……よし、全消去します」
ゼノンが端末をコンソールに接続し、コマンドを叩き込む。
$ force-format /building/mana_core
$ install --os zenon-os_v2.0 --all-room
次の瞬間、屋敷全体が眩い光に包まれた。
壁にこびりついていた「呪い」が、エラーコードと共にゴミ捨て場へと送られ、淀んでいた空気が一瞬で「浄化」される。
「え……?呪いが、消えた……?」
「ゴミ(ジャンクデータ)を掃除しただけです。ついでに、建物全体に『自動修復(自己修復プログラム)』をかけました。今夜からここは、世界で一番安全な場所になります」
ボロボロだった壁がひとりでに修復され、窓ガラスが輝きを取り戻す。
さらにゼノンは、屋敷の屋上に巨大なアンテナ状の魔法陣を投影した。
「よし、世界中の魔力情報を収集する『クローリング』を開始。これで、どこで誰が、どんなバグ(事件)を起こしているか、手元の画面で監視できる」
その頃、王国・王都。
勇者レオンたちは、さらなる絶望に直面していた。
「報告します!国内の防衛システム、完全沈黙!さらには隣国の魔導帝国が、我が国の『セキュリティホール』を突いて侵攻を開始しました!」
「な、なんだと……!?ゼノンを追放してから、まだ三日だぞ!?」
王国のシステムは、もはやゼノンという「管理権限」なしでは一歩も動かない。
彼らがゴミだと思って捨てたのは、実は国という巨大なシステムの「心臓部」だったのだ。
「……あ、王国軍のメインサーバーが陥落した。セキュリティがザルすぎるんだよな、あそこ」
自分専用の最高級のデスクに座り、三つのモニターを眺めながらゼノンが呟く。
横では、リセが淹れてくれた温かいお茶が湯気を立てていた。
「さあ、リセ。今日からここが僕たちの拠点だ。とりあえず、君の魔導書の『セキュリティ・アップデート』から始めようか」
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