第15話:未知のアクセスログ
世界OS『ZENON-NET』が稼働して数年。世界は驚くほど平穏だった。
かつての魔導師たちは「エンジニア」や「オペレーター」へと職を変え、人々はゼノンが提供する安定したインフラを享受して暮らしている。
学術都市の最北端、ゼノン・システム管理センター。
ゼノンはいつものように、リセが淹れたお茶を片手に、巨大な監視モニターのログを眺めていた。
「平和ですね、ゼノンさん。大きなバグ報告も、ここ数ヶ月は一件もありません」
「……いや、リセ。気になるログがある」
ゼノンが指を滑らせると、モニターの隅に、青白い光がチカチカと不規則に点滅する一箇所が表示された。
「ここだ。世界の南端、絶海にある無人島。僕のシステムでは『未使用のメモリ領域(NULLエリア)』として、アクセス権限をかけている場所なんだが……」
モニターには、本来存在しないはずの”【外部接続要求】”のログが、凄まじい勢いで流れ続けていた。
「外部接続……?帝国や王国の生き残りですか?」
「いいえ。通信プロトコルが全く違う。僕のOSどころか、この世界の魔法言語ですらない……もっと野蛮で、かつ暴力的な、”『別のOS』”による強制アクセスだ」
その時。
警告音がセンター内に響き渡った。
[Warning] Critical Security Breach detected.
[Warning] 未知のオブジェクトが『物理レイヤー』に出現。
「座標、特定。……リセ、出張の準備をしてくれ。どうやら、僕が設定した『世界の壁』を物理的に突き破って、勝手にログインしてきた不届き者がいるらしい」
ゼノンは重い腰を上げ、愛用の端末手に取った。
同じ頃。
南の無人島。空間がガラスのように割れ、そこから一人の男が降り立った。
金色の豪奢な鎧に身を包み、身の丈を超える巨大な大剣を担いだその男は、周囲の景色を眺めて鼻で笑った。
「なんだ、この世界は。魔力の密度が一定すぎて、まるで作り物のようだな。……まあいい。女神から『バグまみれの世界を救ってこい』と頼まれたが、この程度の世界なら一週間で制圧完了だ」
男の足元には、彼が降り立った衝撃で、ゼノンの管理する「島の地面」がバグのようにノイズを吐いて崩れ落ちていた。
「――おっと、さっそく『管理者』のお出ましかな?」
男が視線を上げた先。
空中に浮かぶ魔導ボートから、眠たげな目を擦りながら降りてくるゼノンの姿があった。
「……君。そこ、立ち入り禁止区域ですよ。不正侵入(不正アクセス)の自覚はありますか?」
ゼノンの冷ややかな声が、異世界から来た「自称・勇者」に投げかけられた。
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