第13話:世界のOSの再起動(リブート)
帝都の中央広場。消滅した「魔王」の残骸――ノイズの塵が舞う中で、ゼノンは淡々と端末の操作を続けていた。
周囲には、絶望から救われたはずの帝国兵たちが、あまりの「格の違い」に腰を抜かして座り込んでいる。
「ゼノンさん、これで本当に……終わったんですか?」
リセが恐る恐る尋ねるが、ゼノンはモニターから目を離さない。
「いいえ。これは単なる個別のバグ修正です。根源的な問題を解決しない限り、またどこかでエラーは起きます。……だから、今から『全サーバー同時メンテナンス』を行います」
ゼノンが空中に巨大なキーボードを投影した。
その規模は帝都を覆い尽くし、さらには学術都市、そして滅びゆく王国の空にまで、青白いプログラム・コードが浮かび上がる。
「え……?世界中の空に、文字が……!?」
世界中の人々が空を見上げた。
ゼノンが実行しようとしているのは、魔法を「才能ある者の特権」から「世界の基本インフラ」へと書き換える、前代未聞のアップデートだ。
$ sudo systemctl restart WORLD_SYSTEM
[System Message] 既存の魔法体系を順次シャットダウンします。
[System Message] 新OS『ZENON-NET』を全領域にデプロイします。
その瞬間、世界中の魔導師たちが持っていた杖や魔導書が、一時的にただのガラクタと化した。
魔力を持たない農民も、最前線で戦う騎士も、等しく「魔法が使えない状態」へとリセットされる。
「な、なんだ!?魔力が……感じられない!」
「ゼノン!貴様、世界から魔法を奪うつもりかッ!」
どこからか聞こえる騎士たちの悲鳴を、ゼノンは一蹴する。
「奪うんじゃない。標準化するだけです。これからは、血筋や才能なんていう不確かな変数に頼る必要はありません。誰でも、正しく入力すれば、正しく結果が得られる。……それが本来の『システム』の姿でしょう?」
ゼノンがエンターキーを叩いた。
空の文字が一斉に弾け、金色の光の雨となって地上へ降り注ぐ。
新OSが適用された世界では、魔力は「大気から供給されるフリーなリソース」へと変わった。
かつてゼノンを追放した王国の残党たちは、自分たちが必死に守っていた「秘伝の魔導」が、今や子供の遊び道具並みの難易度に簡略化されたことを知り、その存在価値を完全に失った。
勇者レオンは、もはや光ることもない聖剣を握りしめ、平民たちが「あ、火が出せた!」と喜ぶ姿を見て、絶叫した。
彼が誇り、ゼノンをバカにする根拠としていた「選ばれし者の才能」は、ゼノンの手によって「誰でも使えるフリーソフト」へと成り下がったのだ。
「……リセ。これでようやく、僕の『理想環境』が整った」
ゼノンは端末を閉じ、清々しい顔で空を見上げた。
もう、不当な追放も、非効率的な争いも起きない。
なぜなら、世界そのものがゼノンという管理者の「仕様書」通りに動くようになったのだから。
「さあ、帰って続きのコードを書こう。……リセ、夕飯はパンがいいな。美味しいやつ」
「はい!ゼノンさん!」
伝説の魔導エンジニアの物語は、こうして「世界の再構築」をもって、ひとつのログ(記録)として刻まれた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
もし「面白い」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、作品ページ下部にある**【☆☆☆☆☆】**からの評価や、ブックマーク登録で応援をいただけますと非常に嬉しいです!
皆様の応援が、執筆の最大のモチベーションになります。
評価・感想・ブックマーク、ぜひよろしくお願いいたします!




