第10話:自動処理される軍神
王国を実質的に滅ぼしたガルドア魔導帝国。その精鋭部隊『鉄血魔導騎士団』が、次なる標的として学術都市『アルカ・アカデミア』の境界線に現れた。
彼らの目的はただ一つ。都市のどこかに潜む、王国の「元・管理者」を捕らえ、帝国の兵器として再利用することだ。
「報告!対象の潜伏先、旧事故物件ビルの周囲に強力な防壁を確認!」
「ふん、所詮は王国の落ちこぼれが張った結界だ。我が帝国の『多重位階分解魔法』で、根こそぎコードを書き換えてやれ!」
帝国の将軍が号令を下す。数百人の魔導師が一斉に呪文を唱え、ゼノン・ラボに向かって「システム破壊用」の黒い雷を放った。
だが。
ラボの屋上に設置されたアンテナが、ピクリと反応した。
「……外部からの不正アクセス、検知。パターン分析……完了。帝国の標準プロトコルですね。旧式すぎて、あくびが出ます」
ラボの中で、ゼノンはキーボードを叩くことすらせず、自動で流れるログを眺めていた。
「ゼノンさん、すごい衝撃が……!敵の攻撃、防げますか!?」
「防ぐ?いいえ、リセ。リソースがもったいないので『転送』します。あ、ついでに攻撃元を特定して、パケットをそのままお返ししておきますね」
空中で、帝国の黒い雷が「グニャリ」と空間ごと捻じ曲がった。
反射ではない。ゼノンが結界に仕込んだのは、【座標定義の動的書き換え】。
放たれた攻撃魔法の「目標地点」が、瞬時に「攻撃主自身の座標」へと書き換えられたのだ。
「なっ……!?魔法が、こちらに――ぎゃああああっ!!」
自分たちの放った最大火力が、自分たちの陣地のど真ん中で大爆発を起こす。
混乱する帝国軍に対し、ゼノンのラボから一本の青い細線が照射された。
「$ auto-delete --target ENEMY_UNIT(敵ユニットを自動削除)」
ゼノンが呟くと同時に、青い線に触れた帝国の魔導師たちの魔力回路が、一瞬で「初期化」されていく。
殺すのではない。彼らから「魔法を使うための才能(OS)」根こそぎアンインストールしたのだ。
「ひ、魔力が……魔法が使えない!俺の、俺の魔力回路が消滅している!?」
「安心してください。ただの『強制シャットダウン』です。二度と再起動(魔法行使)できないように、レジストリも掃除しておきましたけど」
空中のモニター越しに、ゼノンは敗走する帝国軍を冷ややかに見下ろす。
「僕の拠点は、許可されたユーザー以外、ログイン(立ち入り)禁止です。物理的な暴力でログインしようとするなら、それはただの『ウイルス』と同じ。アンチウイルスソフトで処理するだけですよ」
帝国最強と謳われた騎士団は、一度もゼノンの姿を拝むことすらできず、文字通り「無力化」されて全滅した。
学術都市の賢者たちは、その圧倒的な「自動処理」を目の当たりにし、もはや恐怖すら通り越して神への畏怖に近い感情を抱き始めていた。
「……さて。邪魔なウイルスも消えたことだし、リセ。開発を再開しましょうか。次は『世界の魔力通信網』のデプロイです」
ゼノンの視線は、もはや一国の争いなどという小さな次元にはなかった。
彼は、この世界の理そのものをリファクタリングしようとしていたのだ。
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