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巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


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9/11

閃きの先

トレーナーの腕を捲って。

メッセージを打ち込む。

「お久しぶりです。ゆうです。遅くにごめんなさい。これから少し話せますか? 大丈夫なら連絡下さい。っと。これでいいかな」

読み返して。

よし。

送信。

返事が来るまでの間に。

スマホのりょうさんに関するメモ書きを。

パソコンに送信しておく。

鼻歌混じりに。

食べるのを忘れていたクッキーをつまんで。

空のマグカップを手にキッチンへ向かう。

電気ケトルでお湯を沸かす。

その間にトイレに行って。

鏡の前ではにかんだ。

少し嬉しそうな女の子。

両手で頬を軽く叩いて。

キッチンへ戻る。

ティーバッグの入ったマグカップにお湯を注ぐ。


プルル、プルル……

あっ。

来た。

「ちょっと待ってよぉ……」

冷蔵庫から取り出した牛乳をたっぷりつぎ足して。

マグカップを両手で包んで。

そろそろと足早にパソコンデスクに向かう。

「はいはい。お待たせ」

カチッカチッ。

マウスをクリックして。

通話アプリを立ち上げる。

映し出された画面には。

眠そうに目をこする男の子が一人。

「けんくん。ありがとう」

そっとマグカップに口をつけて。

「……っ!」

熱さに顔をしかめる私。

『大丈夫ですか? 相変わらずおっちょこちょいですね。お行儀も悪い』

テーブルにマグカップを置いて。

椅子に腰かけた。

「はぁい。おてんばですよ。どうせ」

『どうしたんですか? こんな遅くに珍しい』

「ちょっと、聞きたいことがあって……」

私はけんくんに、事の経緯を説明する。

そして、りょうさんとの会話をまとめたメモも転送した。

「ほう」

「ふーん」

「へえ」

相づちを打ちながら。

聞いていたけんくんは。

興味を示してくれたみたいだった。


けんくんとは、以前ランダムチャットで知り合って。

お互いに歴史好きが高じて。

意気投合したんだ。

その時。

けんくんから連絡先を教えてくれた。

それから、たまにこうやって。

通話アプリで歴史談義に花を咲かせる。

大切な仲間で友達。

『ふうん。なるほど、その彼のことが知りたいと。さしずめ居場所が知りたいんですね』

「そう」

『送ってくれたメモにある。寝観音ねかんのんのお寺もヒントになりそうですよ』

「何か知ってるの?」

『あくまでも推察ですけど』

「話して。聞きたい」

片方の口の端を得意気に上げたけんくん。

『寝観音は横になっている観音様の銅像。つまり涅槃ねはん像かもしれない』

「そんなのもあるんだ」

『ええ。これもまた大小様々で。日本全国そこらじゅうにある。昔、町起こしとして、そんな事業が盛んだったみたいで……』

「けんくん。話が逸れそう」

『あっ、失敬。もう一つ別の角度から。「見えるお寺」という言い回しから考えると、そのお寺に「ある」のではなくて、そこから「見える」のではないかと』

……あっ!

「なるほど! けんくん天才!」

画面の向こうで。

舌なめずりをしたけんくん。

『日本は森羅万象に神様が宿ると自然を畏敬し崇拝してたでしょ』

「うん」

『それは仏教が伝来してからも同じで。山の稜線。すなわち山の形が仏様の横顔に見える。というよりは見出したってことですね』

「へえー、確かに木の幹とか人の顔に見えてくる」

『マジですか? それ?』

「ふん」

おちょぼ口でうなずく私。

ぶるぶると身震いしたけんくん。

『んんっ。まあ、そういう場所がやはり日本各地にはあるわけです』

カチャカチャ……

と小刻みにキーボードを叩く音。

よく喋りながら。

そんなことできるな。

『涅槃像の方はダメですね。大きな観音様のそばにはないです。そもそもそれ自体も大きかったりしますからね』

「じゃあ、白い観音様がある場所の近くに寝観音に見える山がある所ってことだね」

お陰で。

糸口が見つかりそう。

口許で両手を合わせ。

肩をすくめた。

『そうです……おや?』

顔を突き出したけんくん。

「どしたの?」

私は。

「ふーふー」

と。

息を吹きかけて。

ミルクティーを口に含んだ。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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