侃々諤々
『ないね』
「ん?」
『白い観音様と同じ場所に寝観音が見れる場所がない』
「うそ?」
『うん。嘘をつかれたか。でも……もらったメモをみる限り、嘘をついたようには感じない。ただぼかしている気がするな』
「ぼかしている?」
カチャカチャ……
話しながらも。
調べ続けてくれているけんくん。
元々。
考察したりするのが。
お互い好きだけど。
かなり。
興味を持ってくれているのが。
傍目にも分かる。
『うーん。家紋からは探せそうにないね。そもそも君の家の家系図って、結構な代物かもしれない』
「そうなの?」
ぽりぽりとクッキーをついばむ私。
『まあ、推察だけどね。何か他にヒントはないかな。よく食べるね。太るんじゃないの?』
「ハラスメントだよ」
『あっ。これは失敬……』
「冗談だよ」
『知ってます……でも、その彼も歴史に造詣が深いのでしょうね。ある意味羨ましい』
「ん?」
『僕は近場しか行ったことがない。実際に各地を巡ったら見えないものも見えて。発想がわくかもしれない』
「歴史オタクはみんなおんなじようなことを言うんだ」
『立証は困難だけど、真実を知りたいからじゃない。今こうしてるのもある意味一緒』
カチャカチャ……
「ありがとう。けんくん」
『いえ、こちらこそ。こんな面白そうな話に巻き込んでくれて』
「私も旅してみたいなぁ」
まだ見ぬ土地と。
りょうさんに想いを馳せた。
『にやけてますよ』
「え……?」
けんくんだって。
ニヤニヤしてるじゃん。
すっと。
笑みが消えて。
真顔になったけんくん。
『ちょっと仮説立てました』
「はい。伺います」
ピンと背筋を伸ばす私。
『彼がおばあさんから教わった歌あるでしょ』
「うん。えーと。日沈みの社去り、大いなる山仰ぎ見て。山越え野を越え、打出た海にて島渡る」
『お見事です。恋の力は絶大だな』
「はい。ハラスメント」
画面を指差す私。
『これは失敬』
なんでか敬礼するけんくん。
『歌詞の内容から鑑みるに。これは移動の歌。それこそ旅の歌だと思う』
「そうなの?」
『ええ。その彼。ルーツを辿ると言っていたのでしょ?』
「うん」
『最初の日沈みの社は、出雲の日御碕神社のこと。大いなる山は伯耆大山』
カチャカチャ……
『そして中国山地を越えて瀬戸内海に出た。そしてどこかの島へ……』
わっ。
「さすがけんくん! お見それしました」
ペコリと頭を下げる。
『いや、こんなのは誰でも分かりますよ。それより、君の家系図にあった……』
あっ!
「コジマからユナキジマ……」
ぞくぞくして。
鳥肌が立つ。
『やりますね。恋の力』
私は画面に向かって。
いーっとする。
『それで、どう思いますか?』
カチャカチャ……
「じゃあさ、夕凪島ってこと?」
『だと思います。ただ、そうなると君も気づいているでしょ? 彼のご先祖と君のご先祖は同じ一族かもしれない』
「……うん」
『だとしたら、すごい巡り合わせですね』
「……うん」
カチャカチャ……
『見つけました』
「何を?」
けんくんは。
くっと。
得意気に口の端を持ち上げた。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




