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巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


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10/11

侃々諤々

『ないね』

「ん?」

『白い観音様と同じ場所に寝観音が見れる場所がない』

「うそ?」

『うん。嘘をつかれたか。でも……もらったメモをみる限り、嘘をついたようには感じない。ただぼかしている気がするな』

「ぼかしている?」

カチャカチャ……

話しながらも。

調べ続けてくれているけんくん。

元々。

考察したりするのが。

お互い好きだけど。

かなり。

興味を持ってくれているのが。

傍目にも分かる。

『うーん。家紋からは探せそうにないね。そもそも君の家の家系図って、結構な代物かもしれない』

「そうなの?」

ぽりぽりとクッキーをついばむ私。

『まあ、推察だけどね。何か他にヒントはないかな。よく食べるね。太るんじゃないの?』

「ハラスメントだよ」

『あっ。これは失敬……』

「冗談だよ」

『知ってます……でも、その彼も歴史に造詣が深いのでしょうね。ある意味羨ましい』

「ん?」

『僕は近場しか行ったことがない。実際に各地を巡ったら見えないものも見えて。発想がわくかもしれない』

「歴史オタクはみんなおんなじようなことを言うんだ」

『立証は困難だけど、真実を知りたいからじゃない。今こうしてるのもある意味一緒』

カチャカチャ……

「ありがとう。けんくん」

『いえ、こちらこそ。こんな面白そうな話に巻き込んでくれて』

「私も旅してみたいなぁ」

まだ見ぬ土地と。

りょうさんに想いを馳せた。


『にやけてますよ』

「え……?」

けんくんだって。

ニヤニヤしてるじゃん。

すっと。

笑みが消えて。

真顔になったけんくん。

『ちょっと仮説立てました』

「はい。伺います」

ピンと背筋を伸ばす私。

『彼がおばあさんから教わった歌あるでしょ』

「うん。えーと。日沈みの社去り、大いなる山仰ぎ見て。山越え野を越え、打出た海にて島渡る」

『お見事です。恋の力は絶大だな』

「はい。ハラスメント」

画面を指差す私。

『これは失敬』

なんでか敬礼するけんくん。

『歌詞の内容から鑑みるに。これは移動の歌。それこそ旅の歌だと思う』

「そうなの?」

『ええ。その彼。ルーツを辿ると言っていたのでしょ?』

「うん」

『最初の日沈みの社は、出雲の日御碕神社のこと。大いなる山は伯耆大山』

カチャカチャ……

『そして中国山地を越えて瀬戸内海に出た。そしてどこかの島へ……』

わっ。

「さすがけんくん! お見それしました」

ペコリと頭を下げる。

『いや、こんなのは誰でも分かりますよ。それより、君の家系図にあった……』

あっ!

「コジマからユナキジマ……」

ぞくぞくして。

鳥肌が立つ。

『やりますね。恋の力』

私は画面に向かって。

いーっとする。

『それで、どう思いますか?』

カチャカチャ……

「じゃあさ、夕凪島ってこと?」

『だと思います。ただ、そうなると君も気づいているでしょ? 彼のご先祖と君のご先祖は同じ一族かもしれない』

「……うん」

『だとしたら、すごい巡り合わせですね』

「……うん」

カチャカチャ……

『見つけました』

「何を?」

けんくんは。

くっと。

得意気に口の端を持ち上げた。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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