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巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


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11/11

転がる石のように

『夕凪島に絞って、寝観音で調べたら、個人ブログだけど、写真付きで記載があった。今リンクを送った』

けんくんが。

ウインクという名の両目を閉じた瞬間。

ピコン。

通知音がして。

私はスマホを手に取る。

『その画像に映ってるのは夕凪島の対岸の四国の山並み。平らな山が有名な屋島』

「へえ。そうなんだ……」

源平の合戦があった所だね。

『夕凪島の西龍寺という山の上にあるお寺から見えるみたいだね』

「じゃあ……」

『うん。おそらく彼が話していたお寺というのが西龍寺。でも、この寝観音は島の人でも知る人ぞ知る代物らしい』

確かに青い海と空の間。

まっ平らな稜線を広げる山。

『その左隣の凸凹したのが五剣山。どうだい? 観音様の横顔に見える?』

「……見えるかも」

『決まりだね』

「うん」

『……行ってみようかな』

椅子にもたれて。

顎をさすりながら。

眉間にしわを寄せたけんくん。

「ん? どこへ?」

『もちろん。夕凪島に』

「今から?」

『おやおや、恋煩いは厄介だね』

「もう、からかわないでよ」

べーっと。

舌を出した私。

『これは失敬。明日から三連休でしょ。朝に出れば昼前には着ける』

「ん? けんくんの所から近いの?」

けんくんは。

柔らかな微笑みを一つ落とす。

『まあ、君なら言ってもいいかな。僕が住んでるのは大阪なんだ』

「そうなんだ。いいなぁ。でも全然、関西弁じゃないんだね」

『そりゃあそう。関西生まれじゃないからね。どうだろう。君も一緒に行く?』

「え……? 行きたいけど。私、東京なんだよね……」

唐突な提案と。

もしかしたら。

というわずかな可能性。

それに旅費……

夏休みにバイトして。

貯めたお金があるけど……

『東京か。遠いね。旅費もかかる。行ったところで彼に会える保証もないしね』

うう……

「痛いよ。心が」

『失敬……』

「でも、行ってみようかな……」

りょうさんのことも。

家のことも。

夕凪島につながっている。

りんごが地面に落ちるみたいに。

引力に吸い寄せられている。

気がした。

都合いいかな。

クスッとこぼれた笑み。


カチャカチャ……

『行くなら、僕の方で宿は手配するよ。もし、お金が足りないなら清算はあとで構わないから』

「いいの?」

『ええ。面白そうですから実地調査。あっ。僕の方は歴史ですけど』

「もう。私だって興味出てきたよ」

『まあ、彼も絡んでいますからね』

「けんくん……」

私はモニターに顔を近づけて。

目を細めて。

じーっと睨みつけた。

けんくんは。

片眉をピクリと震わせる。

カチャカチャ……

『失敬。じゃあ、明日の朝。東京駅、6時55分発のぞみ7号に乗ってください。僕は新大阪から乗り込みます』

「え? そんなに早いの?」

『ええ。少しでも向こうで活動した方が……ほら、彼に会える確率も上がりますよ』

失敬って。

全然、反省してないじゃん。

「……分かったよ」

なんか。

見透かされて。

バレバレな感じなのが。

気に食わないけど。

でもでも。

ご先祖様のことも。

気になってるんですよ。

『それで姫路まで行きます。そこからはフェリーですね。ゆうさんは免許持ってる?』

「うん。でも、全然運転してないよ」

『なるほど。バスもあるみたいですが、夕凪島での移動は車の方が良さそうですね。覚悟しといて下さい。僕もゴールデンペーパードライバーですから』

「……覚悟ね」

『他のことは、明日会った時に話しましょう。家系図とか必要そうな資料等々忘れないようにお願いします』

「うん」

『じゃあ、おやすみ』

「うん。おやすみ。ありがとう、けんくん」

けんくんは顔の脇で。

手をグー、パーさせながら。

プツンと消えた。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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