過ぎたるもの
こんがりした焼き魚も。
島の特産の佃煮も。
美味しいけど。
味気ない。
「今、フロントで聞いてきたけど。あいつは、7時前にホテルを出たらしい。その時に、精算は済ましてったって」
川勝さんは。
喋りながら。
椅子に腰かけた。
「え?」
「それに、急いでいるようだったみたいだね」
「あのぉ……」
「何かな?」
「ハクトという人と、関係あるのでしょうか?」
川勝さんは。
テーブルに腕を乗せて。
身を乗り出す。
「ほう。その話、聞いたんだ」
「はい」
「あり得るね。実際、昨日目撃したわけでしょ」
「はい。私は車しか見てないですけど」
「昨日、連絡貰ったとき、土庄からの帰りでね、国道走ってて、対向車意識してたんだけど、その黒い八王子ナンバーの車とはすれ違わなかったんだよね」
「そうだったんですね」
「途中で脇道に入ったとしても、麻霧山の裾野を抜ける道と、蒲生というところから、麻霧山に続く道くらいしかないんだよね」
「じゃあ……」
「なんとも言えないかな。目撃した場所って、このホテルに向かう県道でしょ?」
「はい」
「なら、国道との交差点で、直進しないで、右折してたら、中山方面にも内海方面にも行けるからね」
「なるほど」
でも。
あの黒いバンは。
醤油工場の辺りから一緒に走ってた。
ホテルに向かうために、
県道に入って。
つけられてるのかなって。
機転を利かしたけんくんが。
車を止めて。
バンは追い越して。
しばらくして。
戻ってきて。
すれ違った……
その時に。
けんくんの様子が変わって……
「それに、交差点の先で左折して、瀬田港に向かった可能性もあるわけだから、行方を捜索するのは難しいね」
「そうですか……」
お茶碗の中。
最後のお米を口に運んだ。
昨日の夜は普通だったし。
今朝も朝風呂を楽しむって。
お風呂で何かあったのかな……
「ごちそうさまでした」
「どう? 島の食事は?」
「あ、とっても美味しかったです。お魚も醤油も、それに素麺も」
「やっぱり、そうだよね。素麺は絶品」
「はい。いくらでも食べれてしまいそうで、太りそう」
「うんうん。そうだ、僕の家の近くに旨い店があるんだよ」
「そうなんですか? 羨ましい」
「弟がね、バイトしてるんだ」
「へぇー」
あれ?
もしかして……
「それって、『松寿庵』ですか?」
「おやおや、知ってたんだ」
「はい。昨日、お昼に食べました……確かに、川勝さんに似た感じの男の子がいました」
「そう。似てるかな?」
「はい。目元とか」
「ふーん。そっか」
ご近所さんなら。
きっと。
香さんのこと。
知ってるよね。
聞いてみたいけど……
秘密だって約束しちゃったからな……
「さて。これから、どうしようか? 何か予定はあるの?」
「でも、けんくんのことが……」
「心配?」
「そりゃあ、そうですよ。何にもいわないで、いなくなったんですから」
「なるほど。里村さんは、あいつには過ぎたる友達だね」
目の前で笑う川勝さん。
大人の余裕なのか。
私一人がやきもきしてる。
けんくんも。
子供じゃないし。
変なこととか。
するとは想わないけど……
私にとっても。
過ぎたる友達だから……
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