上手な人
「ここで待っててもいいけど、行きたいとこあるなら、出向いた方がいいよ」
「はい」
「あいつのこと、気にかけてるのは分かる。けど、じっとしてても勿体ない。時間は有限だし、犬も歩けばって、言うでしょ?」
「それはそうですけど……」
パチン。
指を鳴らし。
ニヤリと笑う川勝さん。
「じゃあ、昼に『松寿庵』の素麺、ご馳走しようか?」
「うーん……」
ちょっと揺らいだ私って……
川勝さんの言うことは。
全くもって同意なんだけど……
あんなに取り乱したけんくんを。
見たのは始めてで。
この突然の行動が。
ハクトという人の事が原因だとしたら。
彼女のこともあるから。
それを考えると。
ね。
でも。
せっかくの機会だし……
「じゃあ、素麺、乗ります」
「そうこなくちゃ。それに、君たちが調べてることも話せるしね」
「ああ、はい」
参ったな。
小娘の考えなんて。
お見通しか。
ならば。
それにも便乗しちゃおう。
「行きたいところは、あるんですけど、その前にお話を伺ってもいいですか?」
「もちろん。僕で良ければ」
「川勝さん。巫女についてどう想ってますか? もちろん現代の巫女じゃなくて、神託を受けていたとされる巫女についてなんですけど、今の世の中にも存在するんですか?」
「ふーん。その意図は?」
「あ、えーと……」
私は川勝さんに。
昨日。
けんくんと話し合った。
絵空事の妄想を伝えた。
根拠もへったくれもないんだけど。
川勝さんは。
呆れたり。
馬鹿にするような素振りは見せず。
むしろ。
興味深げに耳を傾けてくれた。
「なるほど……実に面白いね」
川勝さんは。
リスのように。
両手をこすり合わせている。
「あの……」
「ん? ああ。ごめん、ごめん、巫女についてだよね」
「はい」
「里村さん自身はどう想ってるの? 実際いると想う?」
「神託とかは分からないですけど、いるのかな、と言うより、いたら面白いかなって」
「ふんふん。なるほど」
「現にけんくんの元カノ……布津知栄里さんは、人の心が見れるって聞きましたし……私には、そんな力とかないですけど、その血筋かもしれない。ということは、人知れず連綿と受け継がれているものとか、あったりするのかなって」
「確かに、実体験がないとなかなか信じられないよね」
「あっ、実体験にはなってないですけど、心を読まれた感覚ならあります」
「ほう。コールドリーディングとかじゃなくて?」
「はい。多分……そんなに会話をした訳じゃないですし、口に出してもいないことを言われましたから……」
「ふーん。ちなみにどこで会ったの?」
「え? ああ……」
どうしよう……
秘密って。
約束だから。
さすがに名前は出せない。
私は。
下を指差してみた。
川勝さんは。
首を捻りながら。
眉間にシワを寄せた。
「ホテルで?」
「いいえ……」
ハッとした。
川勝さんの瞳が。
光ったように見えた。
「ここじゃ、なんだからさ、ドライブしない?」
「ドライブ? いいですよ」
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