朝日を浴びて
髪を乾かして。
後ろで一つにまとめて。
服もばっちり。
後は。
部屋に戻って。
メイクをするだけ。
脱衣場の時計は。
7時を少し過ぎた所を指していた。
浴場からの帰り。
東側に面する窓から。
まばゆい暖かな光が。
廊下を覆っていた。
寒さは変わらないはずなのに。
温まったお陰も相まって。
気分まで。
ぽかぽかしてる。
天気も良さそうだし。
島での残された時間も。
有意義になりそう。
なーんてね。
大股で歩きながら。
手提げ袋を抱え歩く。
そうだ。
喉乾いたかも……
エレベーター脇の自販機で。
ミルクティーを買った。
ん?
目に入ったのは。
トマトジュース。
ふふ。
けんくんにも。
買ってって上げよう。
私はそれも購入する。
屈んで缶を取りながら……
ピン!
閃きが舞い降りて。
ふふんと。
にやける。
もう一つ。
ミルクティーを買う。
そう。
昨日のお礼には。
釣り合わないけど。
せっかくだし、
メッセージ送るより。
少しでも話せたらいいよね。
なーんて。
私は。
志村さんの部屋へ。
向かうことにした。
チン。
エレベーターを降りて。
私たちの部屋と反対方向へ進む。
一番奥の部屋。
210号室。
「ふぅー」
小さく息を吐いて。
コンコン。
扉をノックする。
……
静まり返ってる廊下。
もう出発しちゃったのかな……
コンコン。
もう一度。
ノックする。
……
髪を耳にかけて。
そっと。
ドアに耳を押し当てた。
シーンとしてる。
「ふっ」
しょうがないか……
ジュースを手提げ袋に入れて。
スマホを取り出す。
えーと……
「志村さん、昨日は楽しかったです。ありがとうございました。お昼でしたよね夕凪島発たれるの? 見送りに行きたいので、どこの港か教えてもらえますか?」
よし。
部屋に戻って。
メイクしよ。
ふと。
眺めた。
廊下の窓の外。
低い山の上に。
太陽が昇ってきていて。
光線のまばゆさに。
手をかざした。
そう言えば。
朝日を見たの久し振りだな。
東京に出てからは……
はじめてかも。
ああ。
でも。
ここは。
東京じゃないか。
肩をすくめて歩き出す。
鼻歌を歌いながら。
足取りも軽い。
部屋の扉を開ける。
「ただいまー」
無音が返ってくる。
ん?
けんくんは。
まだ戻ってないみたい。
おやおや。
女の私より長風呂とは。
よっぽど気に入ったのかな。
チン。
エレベーターの音が。
耳に届く。
あっ。
けんくんかも?
部屋から顔を出して。
覗き込んだ。
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