可能性は果てしなく
「もしかしたら……」
呟くような。
小さな声に顔を上げると。
けんくんは。
組んだ両手の上に顎を乗せていた。
「ん? なに」
「ああ……もしかしたら……」
スッと手を引いて。
背凭れに寄りかかり。
深く大きなため息を吐いた。
ん?
あっ……!
「もしかして……けんくんの彼女も同じ一族とか?」
ぎこちない笑みを浮かべたけんくん。
「まあ、岡山も夕凪島への道の途中ですしね」
「そだね。可能性はあるかも」
「……ああ、逸れちゃいましたね話」
「ううん。全然。でも、もしそうだとしたら、縁があるんだね」
「縁ですか……そう考えると、不思議ですね」
「そだね。でも、面白いでしょう?」
「ハハハ、確かに……えーと、あ、そうでした、龍の紋様の?話でしたね」
「あっ、そうそう。私ね、紋様じゃないけど、どっかで龍の絵を見たんだよね」
「龍の絵? ですか?」
「ふん」
「あれかな?」
「どれ?」
「西龍寺の本堂に飾ってあったやつですか?」
ハッとして。
口の前で。
両手を合わせた。
「そうそう。それそれ」
「でも、その絵と、紋様は似てなかったような、絵の方はアニメみたいなイラストっぽかったですよね」
「うん。そうなんだけど。確か、夕凪島の形を龍に見立ててたでしょ」
「えーと……三都半島の先端が頭で、島の大部分はとぐろを巻いてるよう感じで……東西の端の下部分。西の前島辺りと、東の田浦半島近辺が手になっていましたね」
「うん。分かりやすい」
「これに何かあるのですか?」
「ちょうどさ、坂手の町の辺りが龍の左手で、確か、玉を握ってたんだよね」
「ほう……言われてみれば、そうだったと想います」
「あの絵が関係あるかは分からないけど、やっぱり、あの辺りに、何かがあるのかなって、想ったの」
「じゃあ、明日。もう一度、帰る前に行ってみましょうか?」
「うん」
「醤油ソフトクリームも食べれますしね」
両目ウインクをするけんくん。
「そだね、今度は2個食べようかな」
ウインクで返す私。
「いいですね。それ。乗ります。他にどこか行きたいとこありますか?」
「あーうん。そうだな……」
頬を膨らませて。
天井を仰ぎ見る。
んー……
あっ……
「志村さんの見送り行きたいかな。お昼には帰るって言ってたから」
「なるほど。どこの港ですかね?」
「ん……?」
「え……?」
「あっ、分からない……」
「なるほど。まあ、連絡先聞いてるんですから、明日の朝にでも聞いてみてください」
「はぁい」
「じゃあ、今日は休みましょうか」
立ち上がったけんくんは。
洗面所へ向かう。
バスタオルを手にして。
すぐに出てきた。
「あれ? また入るの?」
「せっかくの温泉ですから。ゆうさんは?」
「あっ、私、朝入ろうかなって。ホテルのパンフレットに写真載ってたけど、景色がきれいなんだよ。よいしょっ……」
ひょいっと。
立ち上がって。
机の引き出しから。
パンフレットを取り出して。
広げながら。
けんくんに見せる。
それを手にしたけんくんは。
目を丸くした。
「なるほど。確かにきれいですね。湯に浸かりながら。のんびり朝焼けの景色に興じる。趣がありますね」
「フフフ。おじいちゃんみたいだね」
「は?」
「はいはい。これは失敬。そう想った私もおばあちゃんだから。気にしない、気にしない」
けんくんは。
苦笑しながら。
パンフレットをたたむ。
「ほう。志村さんの部屋は喫煙室なんですね」
「そうなの? 煙草の匂いとかしなかったけど……」
「まあ、喫煙室とか気にしない人もいますからね。そうだ。ゆうさん、眠かったら、遠慮ず寝ちゃってて下さい」
「はぁい。行ってらっしゃい」
私は。
微笑みながら顔の横で。
手をグーパーして見せた。
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感謝しております。




