↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/70

疑問は好餌

「ゆうさん、どうしましたか?」

「あっ、ううん。なんとなく、名もなき姫って言葉から、りょうさんが言ってた言葉を想い出して」

髪を耳にかけて。

オレンジジュースを口にする。

「ほう。なるほど」

「なんか、それだけの誇れる血筋? なのに、ふるさとを離れて、身分も隠して、この地に移り住んだんだって想ったら、ちょっと、可哀想かなって」

「確かに。出雲から夕凪島ですからね。歌にあったように山を越え、海を渡る訳ですしね」

「うん」

「その、何故、故郷を離れたのかは分かりませんけど……」

腕を組み。

宙を見据えたけんくん。


ふとわいた疑問を口にしてみた。

「でも、なんで夕凪島だったのかな?」

「ほう。面白いですね」

両手をこすり合わせたけんくん。

「何の当てもなく、旅立ったと想えないよね?」

「そうですね。脈絡もなく、さまようより、目的地はあったはずですね」

「それか、別の目的地があったとか?」

「いや、それはないと想いますね」

「どして?」

「彼の童歌ですよ」

「あ、そっか……」


『日沈みの社やしろ去り、大いなる山仰ぎ見て。山越え野を越え、打出た海にて島渡る』


その時。

川勝さんの言葉が。

甦ってきた。

実際には。

川勝さんの知り合いが。

言った言葉だったはず。

確か……

「けんくん。川勝さんが、知り合いから聞いた言葉が答えかも」


『この島は何かを隠したり、守ったりするには適した地形と大きさだと』


「そうですね。夕凪島は瀬戸内海で2番目の広さで、山々は意外と深くて、盆地や高地もあって、洞窟に入り江も多い」

「でも、なんで夕凪島のこと知ってたのかな?」

「おやおや、楽しくなってきましたね」

チョコレートを。

口に放り込むけんくん。

「あながち、現代の我々は昔の人々を誤解しがちですよね、文明が発達してないからと」

「そうだね。移動の手段とか限られているけど、交流はあったもんね」

「ええ。ですから、夕凪島の存在は知っていたのでしょう」

「そだね。もしかしたら、それこそ知り合いとかいたのかもね」

パン!

けんくんは。

顔の前で両手を叩く。

「それ、あるかもですよ」

「だよね。でも、なーんも根拠ないけど」

「僕らは、それで、いいんですよ」

けんくんは。

トマトジュースを掲げて見せた。

私も。

オレンジジュースを持ち上げた。


「あれ? 何の話してたっけ?」

「ああ、護龍神社は名もなき姫を祀っていたのではないか」

「ああ、そっか。だから、護龍神社って名前なんだ。龍を守る、女性を、姫を守る」

「ええ。ただ……」

「ん?」

「これは、飛躍し過ぎ、まあ、今までの話も妄想なんですけど……」

「うん、聞かせて」

「ゆうさんの祖先は神主。その姫を祀り、ある意味守っていた存在ですよね?」

「まあ、そうなるのかな」

「だとすると、姫の血脈とは別の一族ではないか。もちろん。同じ一族の象徴たる人物をお祀りしただけかもしれませんが」

「一理ある」

「まあ、どこかの時点で、血の交わりはあったのかもしれませんし、現に……」

「ん?」

真っ直ぐ私を見つめるけんくん。

「んん?」

私は顔を突き出した。

「あっ、失敬」

「なによ?」

「ああ、いや、ゆうさんの瞳です。巫女の血脈を現しているのだとしたら、少なくとも、血の交わりはあったかと」

「ああ……」

「素直に、ゆうさんの家系が姫の血統ということも全然あるわけですが」

「じゃあ、りょうさんも同じ可能性がある。龍の上下の紋様も意味があるよね」

「ええ。上向きの龍の紋様がゆうさんのご先祖。下向きが彼でしたよね」

「ふん。対になってるよね」

あれ?

龍の紋様を想い浮かべたら。

何か。

想い出せそうで。

出せない。

「ゆうさん、どうしました?」

「うーん。何か想い出せそうなんだけど……」

眉間にシワを寄せて。

人差し指でおでこをつつく。

「まさに考える人ですね」

「へ?」

「いやいや」

けんくん。

ニヤニヤしながら、

トマトジュースで。

喉を鳴らしている。


龍の紋様じゃないけど。

龍の絵をどこかで目にしたんだよね……

どこだったっけ……

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。