↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/67

向かい合う

ミルクティーを口に含んで。

真っ直ぐ志村さんを見る。

「私は、ランダムチャットが趣味なんです」

唐突に話題が変わったからか。

志村さんは眉をしかめた。

「ランダム……? ああ、世界中の見ず知らずの人と、おしゃべりするっていうやつ?」

「そう、それです。先日、チャットした人が日本人で、あっ、滅多に出会わないんですよ、日本の方って」

「ふーん。そうなんですね」

私は。

缶をテーブルに置いて。

少し身を乗り出す。

「それで、私、歴史オタクなんです」

「ん? ああ、歴史が好きなんですね」

「はい。それで、その方と歴史の話になって、なんというか、歴史に対する物事の捉え方とかが素敵で」

志村さんは。

頷きながら。

耳を傾けてくれている。

「色々、お話ししている中で、その方は、夕凪島を訪れてたみたいで、行ってみようかなって、来ちゃいました」

「フフフ、もしかして、その人に会いに来たの?」

志村さんは。

顔を突き出して。

含みを持った眼差しを送ってきた。

「え? 分かります?」

私が。

肩をすくめると。

うんうんとかうなずいていた。

「でも、どこの誰だかも知らないんです」

口を尖らせて。

ソファにもたれる。

「そりゃあ、そっか。でも、名前とか聞いてないの?」

「さすがに、本名は名乗りませんから。ファーストネームかニックネームが主流かな」

「じゃあ、探すのは至難の業だね」

「そうなんですよ。でも……」

顔の前で両手を合わせる私。

「でも……?」

志村さんは。

リンゴジュースに口をつける。

「普段、私はニックネームなんですけど、本名言ったんですよ。もちろん下の名前だけですけど」

「ふーん」

「そしたら、相手も名前を言ってくれたんです」

「へぇ。すごいかも。なんか、私までドキドキしてくる」

片手を胸に。

微笑む志村さん。

「まあ、本名かどうかは分からないんですけど……りょう、さんって」

自然と志村さんを覗き込む。

眉がぴくりと動いた。

ように見えて。

また。

瞳が左右して。


でも。

閉じられていた唇の口角が。

すーっと上がる。

「その、りょうさんていう方とは、どんな話をしたの?」

至って。

穏やかな口調の志村さん。

「え、ああ、それは……歴史オタクあるあるなんですけどぉ」

「あるある? どんなの?」

「歴史に興味を持ったら、ほとんどの人が、自分の先祖について、調べるんですよ」

「なるほどね。先祖か」

「そうなんです。それで、ちょっと家系図見てて、気づいたんですけど、もしかしたら、りょうさんと私の祖先は同じかもしれないって」

「へぇ……」

志村さんは。

そのまま。

宙を見据えた。

その瞳に。

翳りが差したように見えた。

「すごいなぁ、たまたま出会った人が同じ祖先ね。でも、どうして、そう想ったの? 同じ……ご先祖様かもしれないって」

「えーと、りょうさんが持ってた

ライターに、龍の模様が刻まれていたんです」

「龍……って、怪獣みたいなの?」

「はい。角があって、蛇の怪獣みたいなやつです」

私が顔の前で。

合わせた両手と体をくねくねさせると。

志村さんは。

ソファにもたれ。

お腹を抱えていた。

「それでですね、私の祖先は明治以前に、夕凪島で神主をしていたようなんです。その家紋。神社の場合は神紋って言うんですけど、それが似てたんですよ」

「へぇー。面白いね」

志村さんは。

リンゴジュースを飲み干した。

「だから、私のルーツを辿る旅も兼ねてるんです」

「なるほどね。どうなのかな? 何か分かったりしたの?」

「いえ、分かったような、分からないような……でも、りょうさんの龍の紋様を見つけたんですよ」

「ん? どういうこと?」

「小さな神社の社殿の裏に千社札が貼ってあったんです。だから、りょうさんも、そこを訪れたのかなって」

「千社札?」

「あっ、それは……」


ブー……ブー……

ん?

スマホのバイブレーション。

私のじゃない。

ポケットの中のスマホは大人しい。

志村さんは。

スカートのポケットから。

スマホを取り出した。

画面を一瞥して。

「もう、こんな時間。そろそろ戻りますね」

ゆっくりと立ち上がった。

つられて。

私も腰を上げ。

とっさに口を開く。

「あっ、あのよろしければ、連絡先交換しませんか?」

一瞬。

躊躇うように。

スマホを抱えた志村さん。


まだ。

聞きたいこと山ほどあるし。

けど。

ダメかな?

「あ、ええ、いいですよ」

「やったぁ! ありがとうございます」

深々と頭を下げて。

顔を上げると。

「里村さんは、面白い方ね」

志村さんは。

頬を緩ませ。

穏やかな瞳で。

私を見つめていた。

「そうですかね」

「少なくとも、歴史って過去のことでしょ。過去に囚われないで、歴史を楽しんでる。面白い話を聞かせてくれてありがとう」

「いえ……」

なぜか。

照れ臭くて。

肩をすくめた。

そんな私に。

目尻にシワを寄せて。

柔らかに微笑む志村さん。

その顔が。

どこかで見たことあるような……

ん?

ああ。

観音様に。

似てる。

そんな気がした。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。