↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/67

開き直る

部屋に戻って。

私はけんくんの荷物を、

クローゼットに押し込んで。

ベッド周りを整頓した。

よし。

スマホで時間を確認する。

19時55分。

約束の時間まで。

あと5分。

けんくんの話が衝撃的過ぎて。

志村百合さんと話すことを。

なんにも考えられていない。

でもさ。

けんくん。

知栄里さんのこと。

今も好きなんだよね。

「ふーっ」

それにしても……

私自身が。

巫女の血筋って……


そう。

素麺屋のあの子……

香さんの瞳は。

まさに。

心を見透かされているような。

吸い込まれそうな感じがした。

じゃあ。

香さんも危ないんじゃない?

そわそわしつつ。

無駄に部屋の中を。

うろうろしてる。

頭の中は情報過多。

心の中は情緒浮沈。

ここからは。

なるようになれ。

かな。

浴場で頑張れたんだから。


りょうさんのこと。

聞けたらいいんだけど……

まあ。

百合さんが。

あの時。

口にした。

りょうという名前が。

私の想っている。

りょうさんと。

同一人物かどうかさえ。

なんにも。

分からないんだから。

んー。

組んだ両手を前に伸ばす。



コンコン。

優しいノック音。

「はぁい」

ちょこちょこと小走りで入口に駆け寄る。

扉に片手を添えて。

ドアスコープを覗き込む。

伏し目がちに佇む百合さんがいた。

髪は下ろしていて。

グレーのパーカーに。

ベージュのロングスカートの出で立ち。

私は小さく息を吐いて。

ガチャ。

鍵を開け。

ドアを引いた。

「よかった。来てくれたんですね」

「せっかくのご縁ですから」

手にしていたビニール袋を掲げ。

にこやかに微笑む百合さん。

中身は……

「あっ、私まだ、お酒飲める年齢じゃないんです」

「フフフ。大丈夫ですよ、中身はジュースですから」

「あ、ハハハ」

廊下に笑い声が響く。

「じゃあ、里村さんは、学生さんかな?」

「ええ。大学1年生です。志村さんは?」

「私は、社会人よ。でも、お酒は苦手で」

苦笑いの志村さん。

「あ、ごめんなさい。どうぞ、入ってください」

私はドアを背に。

志村さんを招き入れる。

「じゃあ、お邪魔します」

「奥のソファに座ってください」

横切る百合さんから。

あの匂いはしなくて。

シャンプーの香りが。

鼻先をかすめる。

ドアを閉めて。

鍵をかける。


志村さんは。

テーブルにビニール袋を置くと。

ソファに腰を下ろしながら。

「部屋の作りは、同じなんですね」

辺りを見回した。

「そうなんですね。景色いいから、このホテルにして良かったって想います」

私は。

向かいのソファに腰かけた。

百合さんはビニール袋の中から缶を取り出す。

「オレンジジュースにリンゴジュース、後はカルピスとミルクティーです」

見た目とは違う。

甘さ満載の飲み物たちに。

親近感を覚える私。

「じゃあ、ミルクティーもらいます」

両手で缶を包み込むと。

キンキンに冷えていた。


プシュ。

プルタブを開けながら。

何気ない感じで切り出す。

「志村さんはいつまで、滞在されるんですか?」

「明日まで。お昼には島を離れます」

「私もです。夕方前に。また来たいですけど、東京からじゃ遠くて」

「確かに」

「志村さんも、東京なんですか?」

「え……? ええ」

「私、江戸川区に住んでるんです。志村さんのお住まいは、どちらなんですか?」

「あ、八王子です」

「八王子……?」

車のナンバーと同じだ。

どういうこと……?

無意識に首をかしげていた。

「えーと、東京の西の方です」

志村さんは。

私が知らないと想ったのだろう。

「あっ、そうなんですね。今年、東京に出てきたので、まだ地理に詳しくなくて……」

苦笑いしつつ。

ミルクティーに口をつける。

たまたまなのかな。

それとも。

関係者……?

とか?

誰の……?


志村さんは。

リンゴジュースを飲んでいる。

「あ、あの志村さんはどうして夕凪島に来ようって想ったんですか?」

「え? ああ、それは……」

言い淀んだ志村さんの視線が。

右に左にさまよう。

私は。

缶に唇をつけたまま答えを待つ。

小さくうなずいた志村さん。

「それは、景色がきれいだったからかな、旅行番組か何かで見てね」

「へぇー」

「里村さんは? どうして夕凪島に?」

「あっ、えーと、私は……」

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。