表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/47

停止。

「あっ、けんくん、スマホ返す」

ん?

プルル……

画面に目をやると。

『川勝先輩』

と表示されている。

「あっ、誰からです? まさか、妹……?」

「あ、ううん。川勝さんだけど……」

首をかしげながら。

スマホを差し出した。

けんくんは。

眉間にシワを寄せて。

顔をしかめた。

「ゆうさん出てもらえます?」

「うん。いいよ」

私は通話ボタンをタップした。

「もしもし」

『も……あれ? ごめんなさい、間違えました』

「あ、あの私です。里村です。葛城くん運転中でして」

『ああ、そうだったんだ、そうだよね、今時、掛け間違いは、そうそうないはずだしね』

「は、はい」

『じゃあ、君に伝えていいかな?』

「はい。何か分かったのでしょうか?」

『うん。分かったというほどでもないけど、面白いことには違いないと思ってね』

「面白い?」

『うん。親父を訪ねてきた人がいてね』

「お父様を?」

『うん。一昨日だったかな』

「その方は、どんな話をしていたのですか?」

『まあ、そう慌てないで。親父の話だと、いくつかの問いがあって。一つは島に伝わる伝説の類で、異端者や漂泊者にまつわるものはないか、鬼とかのことも聞いていたらしい』

「異端者……に鬼ですか?」

けんくんの視線を感じて。

顔を向けて。

目が合うと。

うなずいていた。

畑さんを訪ねた。

亮さんと。

同じ質問内容。

スマホを握る手に力がこもる。


『さすがの親父も知らなかったみたいで、ただ、鬼の伝説は高松沖に浮かぶ男木島おぎじま女木島めぎじまに伝承があるのを伝えたらしい』

「鬼がいたのですか?」

口にして。

我ながら。

間抜けなことを聞いたと後悔した。

『ハハハ、面白い冗談だね。君も多少は歴史をかじってるんでしょ? だから、あいつと行動してる』

「はい……鬼という呼称は、時の権力に抗う勢力がいた。ということですよね」

パチン。

耳に届く。

弾けた。

指音。

『そういうことだね。それともう一つ。家船えぶねについてかな』

「家船……」

また。

けんくんと視線を交わす。

『ほう。家船のこと知ってるんだね』

「いえ、私は昨日はじめて知りました。葛城くんは知ってたみたいですけど……」

『確かに、あいつの見識には一目置いてるから、不思議じゃないな』

今の言葉。

お世辞じゃない。

実感が込められていたように想う。

けんくんを見て。

微笑むと。

はっ?

みたいな顔をして。

首をかしげていた。


『生憎、僕らも数年前に島に引っ越して来てから、そのような人々がいたことを知ったんだ。だから、この件に関しては、先方が期待したような話は出来なかったみたいだね』

「なるほど」

『そして、最後。これが重要で面白い』

川勝さんは。

全ての話を。

本当に楽しそうに喋る。

「はい」

スマホを添え直して。

意識を耳に集中させる。

『君が話していた、護龍神社という名を聞かれたようだよ』

「え……!?」

思わず飛び出た大声。

片手で。

口を塞ぐ私。

『ふーん。そこまで驚くということは、その名を知っている人は限られているのか……』

「あ、あのそれで……」

『ん? あ、ごめん、ごめん。親父も神社のことは知らなくてね』

「はい」

『ただ、親父は、後学の為にと、問い返したそうなんだ、その神社はどのようなもので、なぜ調べているのか? そして、どこの資料にあるのかと』

「なるほど」

『相手の回答は、夕凪島にあったはずで、詳細は言えない。ただ、一族の口伝という、具にもつかないものでね』

「はあ」

『親父が言うには、その訪問者。今思うと少し胡散臭かったようなんだ』

「ん? どういうことですか?」

少し。

言葉に棘が乗る。

分かりやすい私。

だって。

心の中では。

この訪問者が。

亮さんであるように感じているから。

あんなに知的な会話をした亮さん。

胡散臭いなんてある筈がない。


『一族の口伝ということ以外、自分のことすら、ほとんど話さない。どうも歯切れが悪い。まあ、さっきまでは、そういものかと思っていたらしい』

「何か、あったのですか?」

『それは、君のお陰なんだよ』

「ん? どういう……」

『今日、西龍寺の龍応住職を訪ねて、僕のことや家系図を見せたりしたでしょ?』

「あ、はい」

『ああ、島なんてねデジタルより、アナログ情報の方が早いから、気を悪くしないで欲しいかな』

「はい。分かります。私の田舎もそんな感じです」

『そう。なら良かった。それで、僕の名前を出したことで、君の話が出て、ある意味、本物の一族の人間は別にいたってね』

「でも、それだけだと、おかしなことじゃないような気がしますけど。その人が分家とか支流とか……」

『うんうん。いいね鋭い』

声が揺れて聞こえる。

本当に通話越しに。

うなずいているみたい。

「あ、ありがとうございます」

『それで、僕もね見せてもらったんだけど、その訪問者が差し出した名刺がね、名前と連絡先しか記されていない、肩書きのないものだったんだ』

固唾を飲んでいた私。

それって……?

ギアが上がった鼓動は正直で素直。

『名前は確か、しらとりょう。白に戸締まりの戸で、白戸。三国志に出て来る軍師の諸葛亮孔明っているでしょ?』

びくりと。

肩が上がる私。

やっぱり。

亮さん。

「あ、ええ。はい」

幾分。

声が上ずる私。

『その諸葛亮の亮で、白戸亮という男。30歳過ぎのいい大人が、人に話を聞くのに、素性を明かさないのが、引っ掛かっていたようなんだ』

「まあ、確かに……」

私も。

西龍寺のご住職に。

自分が出来る誠意を見せたつもりではある。

だからこそ。

ご住職も応えて下さった。

でも。

何か事情があるのかなって。

あっ。

亮さんの名前を呼んでいた。

女性のことが頭を通過した。

心でため息をついて。

あれ……?

今なんか。

おかしなこと言ってたよね。

川勝さん。

「あ、あのぉ。今、何歳位って仰いましたか?」

『ああ、30歳過ぎって、まあ、親父の印象だけど。僕よりは年上に見えたらしいよ』

「他に何か、その男性の特徴とか、聞いてますか?」

『ん? うーん瘦せていて、そう。眉間にホクロがあったって言ってたかな……』

はっ……!?

違う……

頭が。

鐘が打ち撞かれたように。

グラッとして。

真っ白になった。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ