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巡る世界の中で  作者: ぽんこつ


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会話から得られるもの

目的地。

廃社になった神社があった坂手町には。

醤油ソフトクリームを食べた。

角銀醤油の工場から。

10分と経たずに着いた。

「車を止めるとこが、なさそうなので、坂手港の駐車場に止めますね。少し歩きますけど」

「いいよ。全然。甘いもの食べたし、お散歩だね」

「ゆうさんのそういうとこ、いいですよね」

ん?

これは。

仕返しだね。

けんくん。

「ふふふ。良いとこばかりでしょ? もしかして、好きになっちゃった?」

「そうそう、ちょっと閃いたんですが……」

ガクッ。

ドン!

「……っ!」

左肘をドアの手すりに。

打ち付けた私。

「何やってるんですか?」

「もう。なんでもない」

じんじんと痛む肘をさする。

「それで、なあに、閃いたことって」

「本当に大したことじゃないんですけど」

「はい。伺います」

「ゆうさんのご先祖様の比知という苗字。これ一文字ずらしたら波多になるんです」

ん?

ひち。

はた……

ひち。

「わっ! 本当だ。すごい!」

「そうですか? 僕なんかでも考えつくような安直な手段なんて使うかな」

「いやいや、健一郎くん。簡単に見えるからこそ、かもしれないよ」

誰も分からないけど。

ゼミの教授の口真似をしてみた私。

「なるほど。その偉そうな口調。誰かの物真似ですか?」

「何で分かったの? けんくん。超能力あるの?」

「どうせ、ゼミの教授かなんかでしょ? どこにでもいるんだ」

「正解。どこにでもいるんだね」

「でも、ゆうさんの祖先なら、ゆうさんが言うように、あえて単純にずらした。というのはあるかもしれませんね」

「ちょっと、けんくん。それは私が単純って、こと?」

「これは、失敬。言葉選びを間違いましたね。純粋な、ですね」

「はいはい、じゃあ、名を変えた意味は?」

「そうですね、やはり何かを隠していたから。畑先生の考察は一理あると想いますね」

「隠していたか。なんだろ?」

腕を組んで。

人差し指を顎に添える。

隠すか……

どっかで同じようなことを。

最近。

耳にしたような気もするけど……

んー。

なんだろ。

ばっと。

頭に浮かんだのは。

財宝とか。

もしかしたら。

埋蔵金とか発掘しちゃったり!?

けんくんじゃないけど。

口の片端が上がっていた私。

「隠すで思い出したんですが」

「ん?」

「夕凪島には神隠しの言い伝えがあるみたいですよ」

「神隠し?」

「ええ。忽然と人が姿を消すという、アレですね」

「ふーん。なんか不思議なとこだね」

「ええ。畑先生や西龍寺のご住職の話や、実際に、今日巡ってるだけでも、曰くありげな所だと想います」

ふん。

ああ。

香さんも。

島が私を呼んだみたいなことを。

口にしていたし。

「ああ、ごめんなさい。話が逸れましたね」

「ううん。いいよ。それで、隠していたものでしょ? 宝物とかじゃない?」

「ハハハ。なるほど、やっぱりた……ん、んんっ」

「言ってもいいよ。けんくん」

「着きました」

けんくんはハンドルを切って。

駐車スペースに。

車を滑らせた。

きゅっと。

体が前につんのめって。

止まった車。

「僕は、人かなって想いました」

「ん?」

「ご住職の話に、ゆうさんの祖先の集団が一人の姫とおぼしき女性を連れて、みたいな一文があったでしょ?」

「ああ、うんうんあった、あった!」

「まっ。勝手な辻褄合わせですけど……」

言葉を濁したけんくんは。

私をちらりと見る。

「そうだね。けど……それが面白い。でしょ?」

けんくんは。

口の端を。

いつも以上に上げて見せた。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。


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