探してみたら
『ん? 僕の祖先?』
りょうさんは、煙を一つ吐いて。
灰皿に灰を落とす。
その仕草を目で追う私。
『俺の家に家系図なんてものはなかった。語り話として祖母から聞いたことがあるだけなんだ』
「そうなんですね」
『だから、ルーツを巡る……探す旅をしているんだ』
「わぁ、素敵ですね」
私が微笑みかけると。
りょうさんもはにかんだ。
『差し支えなければ、後学のためにどこの神社だったのか教えてくれないかな? もちろん無理にとは言わないけどね』
「ああ、ちょっと待って下さい」
私はイヤホンを外して立ち上がる。
今は神主をしているわけではないし。
苗字も当時とは違う。
りょうさんの役に立ちたい。
その一心が私を突き動かしていた。
本棚の一番下の引き出しを開ける。
実家から持ってきた家系図がしまってある。
父も母も興味がなくて。
勝手に持ってきた。
家系図と言えば。
巻物みたいなのを想像していたけど。
曽祖父が作り直したもので。
きちんと印刷され冊子になっているもの。
少し黄ばんだそれを手にして。
画面の前に腰かけた。
冊子を手にりょうさんに見えるようにかざす。
『家系図持ってるの?』
「ええ、まあ」
私は髪を耳にかけて。
ページをめくる。
指でなぞって辿っていく。
「えーと。護龍神社。護衛の護に、難しい方の龍」
イヤホンから。
ごくりと唾を飲み込む音がした。
「御祭神は、アメノミナカヌシ、ワタツミカミ、それから事代主と五十鈴依媛。明治になって廃社になったみたいです」
「……そう。どこにあったのかな?」
穏やかな笑みを浮かべて。
煙草を吸うりょうさん。
私はにっこりと微笑みを返して。
冊子に視線を落とす。
えーと。
「夕凪……島ってとこみたいです」
『なるほど』
?
さほど驚いていないような声。
りょうさんは煙草を消していた。
私は指先の文字を見つめる。
注釈に神社の別名が記されている。
夜見守神社。
「あっ。別名もあるみたいです……」
『夜見守神社……』
ため息と共に吐き出された言葉。
「え!? どうして」
顔を上げた私。
画面の向こう。
組んだ手の上に顎をのせて。
鳶色の瞳が鋭く私を射抜いていた。
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