答え……
どれくらいだろう。
お互いを凝視したまま。
沈黙が流れた。
でも。
りょうさんの視線は私じゃない何か。
別のものを見ているような気がした。
俄然。
りょうさんに興味がわいてきて。
心臓が耳元に居座り続けた。
りょうさんの目尻が下がる。
『いや、俺もなかなかのもんでしょ?』
「え? ああ、はい」
『たまたま、廃社になった神社を調べたことがあってね』
カチン。
銀色のライターに炎が揺れて。
くわえた煙草が触れて。
ジッ。
煙が舞う。
鈍く光るライターに何かの模様が刻まれている。
「りょうさん、それ、なんですか? ライターの模様」
『ん?』
りょうさんは、それを一瞥して。
私に見えるようにかざしてくれた。
モニターに顔を近づける私。
角があって……
下を向いている龍だ。
手に握られた玉に何か書いてあるようにも……
「龍なんだ。素敵なデザインですね」
『そう? ありがとう。これね家紋らしい』
「家紋?」
そう言われたら。
どこかで見たことあるような……
『君の瞳。すごく澄んだ黒なんだね。吸い込まれそうだ』
ビクッとして。
固まる私。
ビリビリと全身の血液が沸騰したみたい。
顔が熱い。
泳ぐ視線が定まらない。
『大丈夫?』
「あ、はい」
あわあわする心。
両手でマグカップを持って。
ミルクティーを流し込む。
ぬるくなった液体が。
鼓動を宥めるように。
喉を伝っていく。
唇を結んで。
そっとコップを置いた。
「りょうさん、女の子みんなに言ってるんでしょ?」
小さな勇気を振り絞って。
胸のつかえを口にして。
収まった鼓動が再起動。
『何を?』
煙が目にしみたのか。
目頭を押さえたりょうさん。
心で。
ため息一つ。
いちいち仕草に見惚れちゃう。
「その、さっきみたいなこと……」
声まで震える私。
『ああ、いや、きれいな瞳だと想っただけだけど。言わない方がいいのか……』
私は両手と首をぶんぶんと振る。
「そういうこと、言われたことないから……嬉しいです」
言いながら。
顔がオーバーヒートしてる。
『そう』
りょうさんは頬をへこませて。
煙草をくわえて。
開いた口から。
漏れそうな煙の塊を吸い込んだ。
「私には、その、すぎた言葉かな……」
視線を落として。
唇を噛みしめる。
両手を腿の間に。
言ってもどうにもならない。
喉を越えそうな。
言葉を必死で飲み込んだ。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




