予言……!?
「あの……」
ん?
振り向くと。
あの女の子が。
暖簾を潜り。
店から出てきた。
「さっきの男の方、お知り合いだったのですか?」
「え? うーん。たぶん」
「ん? たぶん?」
「あ、その、なんて言えばいいのかな」
戸惑い首をかしげる私。
「私の方こそ、ごめんなさい」
伸ばした両手を重ねて。
ぺこりと頭を下げる女の子。
「ううん。全然気にしないで」
両手を振る私。
あれ?
ん?
「あのぉ、なんで、その、あなたは知り合いだと想ったの?」
「あっ」
両手で口を覆う女の子。
漆黒の瞳が。
かすかに揺れて。
大きく息を吐いた。
「私は、松薙香といいます。これから言うこと。秘密にしてください」
ん?
「あ、はい」
女の子は。
にこりと微笑むと。
私にそっと。
近づいた。
透き通る。
ううん。
濁りも。
澱みも。
翳りも。
穢れも。
そんなものとは。
縁遠い。
瞳が私を見据えた。
「近いうちに、お会い出来ると思います。島の導きの加護ですから」
「ん?」
「守り、守られる者。そう。島に呼ばれたんです。だって、昔からの縁ですから」
「縁……?」
「はい。私もですけどね」
「え?」
「普段、あまりこういうことを人には言わないんですけど、とても縁がある方だったので、つい」
香さんは。
肩をすくめて。
微笑みながら。
立てた人差し指を口に当てた。
私は黙って。
うなずいた。
「お料理、途中ですよね?」
「あ、はい」
香さんに促され。
店内へと戻る。
香さんは。
何事もなかったかのように。
仕事をし始めた。
私は。
そっと椅子に腰かけた。
「ゆうさん? どうしました?」
「あ、ううん。何でもない」
ん?
けんくんの前に。
素麺の器が増えている。
「ゆうさん、とりあえず食べましょう」
「そう、だね」
「天ぷらもいけますよ。海老なんてぷりぷりです」
「うん! 食べよ食べよ」
突然の香さんの言葉に。
まだ。
理解が追い付いていない。
私は。
箸で挟んだ海老の天ぷらに。
かぶりついた。
「ほんと。衣さくさく、でぷりぷり」
「でしょ? 天ぷらもお代わり頼んだんですよ」
「大丈夫? 食べ過ぎじゃない?」
「いいんですよ。ゆうさんは普段料理とかします?」
「なに。いきなり」
ニヤニヤなけんくん。
あっ。
これは。
料理しない子だと。
想ってるね。
「独り暮らしだと、コンビニ弁当やカップ麺が友達みたいなもんでしょ?」
「ふーん」
「外食もチェーン店とかじゃないですか。めったに食べられませんよ。家庭の味わい」
「なるほど」
「あれ? ゆうさん、料理とか出来るんですか?」
「まあね」
つるつると。
素麺をすする私。
「これは、これは、お見それしました」
テーブルに両手をついて。
頭を下げるけんくん。
私は。
すまし顔で。
天ぷらを口に運ぶ。
うーん。
けんくんの慧眼。
恐るべし。
料理とか……
ご飯は研げるよ。
パスタ茹でたり。
市販のパスタソースと混ぜたり。
目玉焼きとか。
インスタントの味噌汁とか。
これだって。
立派な料理。
だと想う。
あっ。
「近いうちに、お会いできると思います」
香さんの言葉が浮かぶ。
本当に。
そうなったらいいけど……
でも。
香さんの。
あの瞳に言われたら。
そうなるような。
気もする。
秘密だよね。
縁……か。
あれ?
香さん。
私もって。
言ってた。
えーと。
守り、守られし……
視線は香さんを探していた。
厨房で。
また別の女の子と話をしている。
あれ?
双子かな?
背格好も。
髪型も。
おんなじ。
それにしても……
不思議な子だな。
あんな。
予言めいた。
オカルト的なこと。
言うような感じじゃないのに……
もしかして?
霊とか。
オーラとか。
見える人だったり!?
まさか……
ねえ。
私は。
肩をすくめて。
素麺をつまんだ。
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