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そういうところ



「ごきげんよう、皆さま。今日も良いお天気ですわね」


 名前も覚えていないようなご令嬢に、みんなが見ている中謝罪を要求された時のこと。

 ずるい私は、「どうやって切り抜けようかな」なんて考えながら下を向いていた。でも、後ろから聞こえてきた声によって、その思考は全停止する。


 みんなの視線に従って後ろを振り向くと、そこには以前と同じく艶のある髪を披露したお姉様が、なぜかアカデミーの制服姿で立っていた。


「ご丁寧に、どうも。どちら様でしょうか?」

「今、私たちがお話をしていたのですが、どう言うつもりで割って入ったのですか?」

「非常識ではなくって?」


 矛先がお姉様に移動したことによって、私はみんなの視界から逸れていった。いつもの自分だったら、このまま食事を終えて退出していたでしょうね。

 食事の時間に声を掛けてきた人たちが「非常識だ」なんて口にするのは、なんだか面白い。私が野次馬だったらきっと、吹き出していたと思う。


 お姉様、無視してちょうだい。

 どうしてここにいるのかはわからないけど、この人たちはお姉様を傷つける言葉しか言わないわ。私の発言と同じ、聞く価値すらないものよ。だから、お願い。これ以上心を痛めないで。


 なんて、私の心配は不要だったのかもしれない。


「ちょ、ちょっと待って。ごめんなさい、一気に質問されたから最初の質問を忘れてしまったわ。私から見て左の方から、順にもう一度教えていただけます?」


 と、両手を前に出して振りながら、慌てた口調でそう言ってきた。

 その言葉は、思わず毒気の抜ける発言そのもの。言われた令嬢たちも、ポカーンと口を開けながらお姉様をまるで宇宙人でも見ているような視線で眺めている。


 私は、ついに堪えきれなくなって笑い出す。


「あはは、ははは! お姉様ったら!」

「何よ、ソフィー。聞き取れなかったら聞いて良いって、さっき理事長様に教えていただいたばかりなの。私、間違ってる?」

「間違ってないわ。お姉様は、いつだって正しい……。いつだって」

「ど、どうしたの!? なんで泣くの?」

「……お姉様、お姉様」


 そしてそのまま、みんなが見ているのを分かっていながら私は泣き出した。

 懐かしさと、申し訳なさと、自分の不甲斐なさで、どうしようもなく。


 最後にこんな醜態を晒して泣いたのはいつだったのか、思い出せないほど遠いことは確か。

 泣いたって何も解決しないのに、私は何をしてるんだろう。



 気づいたら、謝罪を要求していた令嬢たちが消えていた。

 そして、ダイニングルームに居た他のアカデミー生たちも、何事もなかったかのように……いえ、お姉様に憧れの視線を送りながらも日常に戻っていく。

 お姉様って、こうやって知らないうちにみんなの視線を奪っていくのよね。


 本当、敵わないなあ。


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