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聞き覚えのある声part.2



 神殿に到着すると、教会のような場所に私の妹、ソフィーが1人で神官様に向かって抗議をしていた。見渡す限り、お父様もお母様も、ましてや使用人の姿も見当たらない。神殿の前に馬車も止まっていなかったし、ソフィーはどうやってここに来たのかしら?


 それに、話の内容はよく聞こえてこないけど、何か不満でもあったのかな。まるで、ヒステリックになったお母様のような感じで声を張り上げているから、ちょっとだけ怖い。


「神官様、話の途中に失礼いたします。新たなる異術者をお連れしました」

「ちょっと! 今私が話し、て、る……まあ、レオンハルト様! 奇遇ですわ」


 ルワール様が話しかけると、背中を向けていたソフィーが鬼の形相でこちらに顔を向かせてきた。一瞬たじろいでしまったけど、手を掴んでくれている2人は堂々とされている。

 これ、本当にバレない? だって、ソフィーって私と顔が似てるらしいし……。ソフィーの方が毎日お手入れしてるらしいから綺麗だし、整ってるけど。


 ソフィーは、振り向きざまに言葉を発しつつも、完全にこちらに視線を向けると今までの態度をガラッと変えてレオンハルト様の方へと歩み寄った。つまり、私の居る方へと。


「こんにちは、ソフィー・ベルナール嬢」

「聞いてください、レオンハルト様! 私、ここ2週間あまりで異術が急に弱まってしまったのです。強化できるのは存じ上げておりますが、異術が弱まるなんて聞いたことがありません。そうでしょう?」

「そうですね、通常であれば弱まることはありません」

「ですよね! だから私、神官様にもう一度診断をするようお願いしていたのですが」

「……お願い、ね」


 ……あれ、本当に気づかれてない?

 ソフィーは、私の方をチラッと見てそれっきり、レオンハルト様を正面にして話を進めている。無論、ルワール様にも目も呉れずに。

 ルワール様は、第二王子よ。お姿は知らないとしても、最低限挨拶はした方が良いと思うのだけど……話しかけちゃダメなのよね。


 ルワール様の機嫌を損ねていないかどうか見たくて視線を向けると、呆れたような表情で何かつぶやいていた。これは、後で謝っておきましょう……。


「しかし、申し訳ございませんがこちらも仕事です。次が詰まって居るので、今日のところはお引き取り願えますか?」

「お仕事でしたのね! それは、失礼しました。すぐに退散しますので!」


 ソフィーは、レオンハルト様に向かってカーテシーをするとすぐに、入り口に向かって早足で去って行ってしまった。結局、ルワール様に一言も挨拶をしないで。


 居心地が悪すぎる。

 今の話だと、神官様にソフィーも診断していただいたのでしょう? そのお礼は言ったの? 去る時は、ご挨拶をしてからって最後に一緒に受けたマナーの指導で先生に言われたはずよ。


「ご、ごめんなさい。私の身内が、不敬なことを……」

「気にしていませんよ。それより、バレなかったでしょう?」

「はい……。どうして、バレないとわかったのですか?」

「あのような性格の女性は、自分より美しい女性を視界に入れたがりませんから」

「……? ルワール様を女性と勘違いしたということでしょうか?」

「あー、そっちも多分そうですね。一応、男性の服装なんですけどねえ」

「本当にごめんなさい、姉妹揃って……」


 もう一層のこと、穴がなくても自分で掘りたいわ。

 挨拶はさておき、ルワール様を女性と勘違いしたのは咎められない。私も間違えたし。

 にしても、「あのような性格の女性」って何かしら? やっぱり、不快にさせちゃったのかな。ルワール様もレオンハルト様も、複雑そうな表情で私を見ている。


 それに、今のルワール様の話の通りだとすれば、私は男性に見られたってこと!?

 でも、わかるわ。ルワール様の美しさは、一度見たら女性を辞めたくなるもの。


「ははは、ステラ・ベルナール。元気そうじゃの」

「わっ、は、初めまして。本日は、どうぞよろしくお願いいたします……!?」


 ルワール様に向かって頭を深々と下げていると、奥からこれまた聞いたことのある声が聞こえてきた。この声は、あれだわ。目隠ししていた時に色々状況を説明してくださった神官様。


 そう思って深々とお辞儀と共に挨拶をし、頭を上げた瞬間のこと。

 私は、人違いに気づいた。だって、小さな子どものようなお方が目の前に居る。あの時聞いた声は絶対に優しいおじいちゃんって感じだったし。さっきまでソフィーの対応をしてくださった神官様……は、もうどこか消えてしまったから違うわね。


「初めてじゃないぞい。目隠ししてたから、わからなかったんか?」

「!? え、じゃ、じゃあ、貴方様が、宮殿にいらした……」

「そうそう、あの時は自己紹介をしていなかったな。私は、大神官ベガという者だ。君とは名前が似ているな、ステラ・ベルナール」

「……お、お世話に、なって、おり、ま、す」


 人違いじゃなかった。


 私は、しゃがれた声で「大神官」と名乗った人物を見て唖然とする。

 子どもそのもので、普通にその辺の川で水浴びして遊んでいそうな……本当に、そんな感じの容姿を見て声を詰まらせることしかできなかった。


 シワひとつない肌、つぶらな瞳……世界は広いわ。


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