第7章 カタストロフィー(4)
「情報社会とはいえ今の世の中、生活上本当に必要な情報でさえ、怒涛のごとく押し寄せる無意味な情報に埋もれてしまっていますからね。フェイクニュース、陰謀論、誹謗中傷……」
記者が言うと、老魔導師は微笑みました。
「そんな日常のあり方を、我々は見直すべき時に来ているのではないかな」
それはアリスが生まれる前の時代から生き抜いてきた者だけが持つ、慈愛に満ちた笑みでした。
「悪魔が人の心の隙に入り込むのは得意とするところだ。寂しさ、不安、自己顕示欲。だがな、孤独でいることは、悪いことではないのだよ。孤独を飼い慣らしてみなさい。他人の評価やノイズを遮断し、自分自身の頭で考えるのだ。そうすれば、あらゆるものの真実が見えてくるはずだ」
孤独は解毒剤になり得る。記者は戸惑いながらも、その言葉の重みを感じ取りました。
「孤独は現代社会では否定的に語られがちですが、それが自分を見つめ直すための時間になるのですね」
老魔導師は頷きました。
「孤独は自己検証の場だ。情報の波に流されず、自分の価値観や判断基準を育てる時間を持てば、アルサトラの共鳴に飲まれにくくなる。とはいえ孤独は万能薬ではない。共同体や対話も必要だ。しかし、まずは自分の内側を整えること。それが情報と健全に向き合う第一歩だ」
記者は老魔導師の言葉を噛み締め、静寂の中に身を置くことで生じるであろう、ある種の禁断症状を想像してみました。
情報を遮断し、孤独という名の解毒剤を飲む。果たしてその苦みに自分は耐えられるのか。そして、その先に真実の自己を見出せるのだろうか、と。




