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第7章 カタストロフィー(1)

挿絵(By みてみん)

 

「そして彼も、その危険に魅入ってしまった一人だった」


 老魔導師は、記者が先程見つめていたスマートフォンを指差しながら、その名を告げました。


「【ビクター・ジョーンズ】」


「電子機器産業の革命児と言われた男ですか?まさか彼とアルサトラの間に関係が!?」


「いや、それはわからない。ただ彼の発明した、すべてを映し出すボタンのない黒い鏡。それこそがアルサトラの目であり口であり、最も居心地の良い住処でもあるのだ。ジョーンズの発明がアルサトラの願いを、文字通り掌の上で実現したと言っても過言ではない」


 記者は自身の見慣れた端末に薄ら寒さを感じました。その現実を知り、それに抗うことができる者が、果たしてこの世界にどれだけいるのでしょうか。


「携帯端末を手にした者の多くが正常な判断力を奪われている、そう言われれば、確かに感じるところがないわけではありません。身近なところの事件から、世界の混乱に至るまで、一昔前とはまったく異なる状況であるのも理解できます」


 老魔導師の目は静かに世界の混乱を映していました。SNSで煽られた群衆、瞬時に拡散する噂、そして制御を失った感情の奔流。


 黒い鏡は人々の内面を映すだけでなく、そこに住み着いた何かを増幅しているのです。

 

 

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