第6章 アルサトラ (2)
地方都市の喧騒を離れ、鬱蒼とした森の奥深くにひっそりと佇む古びた館がありました。
生薬の苦い香りで満たされ、古びた書物が壁一面を飾るその館の応接室にて、今、一人の記者が赤いローブのフードを深く被った老人と、テーブルを挟んで向かい合っています。
老人はかつてラルフの国から亡命してきた魔導師の一人で、長年の研究と隠遁生活が刻んだ皺が顔に深く刻まれていました。
記者はその老魔導師に、核心に触れんとする問いを投げ掛けました。
「ひょっとして、その邪悪な精霊アルサトラは、世界一の富豪となったウィル・ロイド会長の傍らにいたのではないでしょうか。彼の成功はあまりに速く、あまりに常軌を逸していたように思えるのですが」
老魔導師は給仕に差し入れられた紅茶の湯気の状態を目で確かめると、重い沈黙の後にゆっくりと首を横に振りました。
「我々も最初はそれを疑い、彼の周囲を術式で探ってみた。だが違った。アルサトラは……特定の個人に取り憑くという非効率な手段を、とっくに捨てていたのだ」
記者が息を呑む中、老人は確信に満ちた声で語りを続けました。
「今やインターネットが世界を覆い、あらゆる思考が電波となって空を飛び交っている。アルサトラは、そのネットワークそのものを住処にしていたのだ。もはやその居場所を特定することはできないだろう。奴は遍在する神のごとき存在となってしまったと言えるかもしれない」
記者は当惑しました。
「なんと。すでに、それほどまでの力を手にしていると言うのですか……」




