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第6章 アルサトラ (1)

挿絵(By みてみん)

 

 シンディの衝撃的な死から数年。世界を覆うメディアは、単なる伝える手段を越えて世界を構築する基盤へと、決定的かつ不可逆な進化を遂げようとしていました。


 その革命の震源地は、西海岸の若き天才【ウィル】がガレージから生み出した、一枚のディスクに収まる新しいOSオペレーティングシステムでした。


 GATE(ゲート)と名付けられたそのOSは、その名の通り、人類を新たな次元へと導く門となりました。


 それまで巨大な装置として一部の専門施設や軍事機関の奥深くに鎮座していたコンピューターが、ウィルが生み出した魔法のようなコードに導かれて、一般家庭という新たな舞台へと歩み出したのです。


 電話回線を介して世界中のコンピューターがつながり、地球規模で蜘蛛の巣の如く張り巡らされた巨大なネットワーク、すなわちインターネットの商用利用が開始されました。


 もはや情報は、テレビや新聞といった限られた手段で一方的に与えられる配給物ではなくなりました。


 情報とは、誰もが望む時に、瞬時に受け取ることが可能なもの。誰もが自ら世界に向けて発信できるものとなったのです。


 情報民主化時代の到来。しかしそれは同時に、物理的な距離や国境という概念を無意味にする電脳空間が、現実世界を侵食し始めたことを意味していたのです。


 人々は便利さに酔いしれ、自分たちが開いたその門の先に、どのような影が待ち構えているのか、想像すらしていませんでした。

 

 

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