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第5章 シンディ (6)
ある夏の夜、パパラッチのバイクを振り切ろうと、黒塗りの車が猛スピードでトンネルへと突入しました。
激しい衝突音。砕け散るガラス。つぶれた車の残骸に向けられたのは、救助の手ではなく、ここでも無数に焚かれるカメラのフラッシュだったのです。
シンディの死は、事故の数分後には地球の裏側まで伝えられました。
発達した衛星通信と二十四時間ニュースネットワークが、彼女の最期をリアルタイムのエンターテインメントとして消費していました。
人々はその悲劇に涙し、世界中で追悼の声が上がりましたが、当初から謎に包まれていたその事故は、同時に人々の興味を掻き立てる格好の話題ともなったのでした。
車の速度、追跡していたカメラマンたちの存在、関係者の不可解な行動など。どれも事故の決定的な証拠とはならず、様々な憶測だけが今なお残されています。
「彼女は殺されたのではないか?」
「王室の陰謀か、あるいはメディアの暴走か」
様々な憶測が飛び交いましたが、真相は藪の中。ただ一つ確かなことは、彼女自身は死によって永遠を手に入れたということでした。
老いることも、美貌が衰えることもなく、最も美しい姿のまま人々の記憶に刻み込まれたシンディ。
それは、アルサトラが約束した永遠の美の、あまりにも残酷な完成形だったのでした。




