第5章 シンディ (5)
シンディが手にした至高の美は、皮肉にも彼女自身を絞め殺す絞首刑の縄へと変じていきました。
あまりにも完璧なその容姿は、急速に発達したメディアにとって、大衆の欲望を煽るための格好の標的となったのです。
彼女がどこへ行き、誰と話し、どのような表情を浮かべたのか。あたかも彼女の一挙一動を常に監視しているかのような、たくさんのカメラの列が彼女の周囲から消えることは二度とありませんでした。
彼女が新しい服を着れば翌日には世界中で流行し、彼女がチャリティで子供を抱きしめれば称賛の嵐が巻き起こりました。
しかし、光が強ければ影も濃くなります。メディアは彼女の笑顔だけでなく、涙も、怒りも、王室での孤立も、すべてを商品として貪るように報じたのでした。
「そっとしておいて!」
彼女が叫んでも、カメラの砲列はなくなりません。望遠レンズは寝室の窓まで狙い、盗聴器が会話を拾い続けました。
人に見られる、それも世界中の人々に昼夜問わず品定めされるということは、一体どれほどの苦痛を生むのでしょう。
彼女の言葉は切り取られ、行動は誇張され、些細な表情の変化すら王室の不和として報じられました。
メディアという大衆の集合知は、レンズ越しにシンディという一人の女性を支配し、解体していったのです。
シンディは本来、心優しく繊細な女性でしたが、メディアの過剰な注目と王室の規律の狭間で精神的な疲労を蓄積していくこととなります。
やがてトラブルメーカーと呼ばれるようになり、守ってくれると信じていた王室の中でさえ孤立していったのでした。
シンディは孤独の中で、自らの心をさらに削り取っていくこととなったのです。
結果的に彼女が手にしたのは「愛」ではなく、世界中から向けられる「消費されるための視線」でした。
アルサトラとの契約、それは、生きた人間としての幸せと引き換えに履行されるもの。そして、そこから逃がさないために、彼女を閉じ込めるための檻でもあったのでした。




