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第4章 歴史 (2)
仮に人間が、エルフやドラゴンのように何百年、何千年と生きられる存在だったとしたら、同じような過ちを繰り返すことはないに違いありません。
「あの戦争はあまりにも悲惨だった。あんな思いをするのは二度と御免だ」
そうやって、痛みを伴う記憶を直に共有できるからです。
ですが、人は長くとも百年少々しか生きられません。どんなに賢者が知恵を絞り、英雄が平和を築いても、彼らが死ねば、その生々しい経験は失われてしまいます。
子供たちは親の説教を古臭いと笑い、結局、自ら怪我をして初めてその痛みを知るのです。
世代が交代するたびにリセットされる記憶。
時が経てば、かつての虐殺も飢餓も、教科書の中の無味乾燥な数行のテキストへと風化し、やがて忘れ去られていくのでしょう。
これが、人間という種の持つ悲しい宿命なのです。




