第3章 エディ (4)
「隣国に核ミサイルが持ち込まれただと!?」
そのニュースは、世界が再び大戦へ向かうかもしれないという恐怖を、エディのみならず、すべての国民たちにもたらしました。
世界は東西の陣営に二分され、核という名の滅びの剣を、互いの喉元に突きつけ合う冷戦時代となったことを、人々は骨の髄まで理解させられたのです。
魔法と科学が複雑に絡み合うこの時代、両陣営は軍事力だけでなく、魔力の保有量や科学技術の成果までも競い合い、わずかな均衡の上に成り立つ平和は、まるで薄氷のように脆いものでした。
核という、かつての禁忌魔法さえ凌駕する終末の力を手にした両国の睨み合いは、エディの精神を激しく消耗させていったのです。
ボタン一つで世界が灰燼に帰す可能性を秘めたその力は、神代よりの歴史においても前例のない規模の破壊をもたらすものでした。
軍部は抑止力としての保持を主張し、外交官たちは対話による緊張緩和を訴え、国民は不安と期待の入り混じった視線をエディに向けていました。彼はそのすべてを受け止めながら、夜ごと眠れぬ日々を過ごしていたのです。
しかし、エディをもっと追い詰めたのは、かつて自分を押し上げてくれたはずのテレビでした。
かつて彼を神々しく輝かせた画面は、いつしか彼のスキャンダルばかりを映し出すようになっていたのです。
些細な失言や家族の噂話、政治的な失策。それらは誇張され、脚色され、まるで魔法のように増幅されて国中に広まっていきました。
テレビは本来、情報を伝えるための装置であるはずでした。しかしこの世界では、映像に宿る共鳴波が視聴者の感情を揺さぶり、時に真実以上の影響力を持つと噂されるようになっていました。
エディはその力をも利用して大統領になったのですが、今やその力は彼を追い詰める鋭利な刃へと変わっていたのでした。
画面の中のアナウンサーが、無神経な笑顔で大統領の支持率低下を伝えるのを耳にしたジョージもまた、焦りを募らせていました。
アルサトラとの契約は息子を大統領にすることだけで、その後の繁栄といった約束は、一切していなかったのですから。
『人々は英雄が好きだ。だが、英雄が悲劇的な最期を遂げる物語は、もっと好きなのだよ』
どこからか聞こえたアルサトラの嘲笑に、ジョージは戦慄を覚えずにはいられなかったのでした。




