第3章 エディ (2)
ジョージの息子であるエディの武器は、若さと端正な顔立ち、そして戦争の英雄という経歴でした。
政治家として修練を積んだわけでもなく、むしろ社交界での華やかな噂ばかりが先行していた人物だったのです。
しかしジョージは、そんな息子の無垢さこそが時代の風を掴むと確信していました。社会は急速に変化し、人々は古い政治家像に飽き始めていたのです。
ジョージが策定した戦略の中核は、当時、急速に一般家庭へと浸透しつつあった新興メディア、テレビジョンを最大限に利用することでした。
魔法と科学が混ざり合うこの世界において、テレビは単なる映像装置ではなく、視聴者の感情に微弱な影響を与える共鳴波を発しているなどという、真偽不明の風説まで流布されていました
けれどもジョージは、アルサトラの力を介してその特性をよく理解しており、エディの魅力をより強く国民に届けることができたのでした。
ブラウン管に映し出されるエディは、爽やかで、どこか気取らない雰囲気を漂わせていました。
出馬直後のラジオ討論では、対立候補のベテラン政治家が優勢でした。声のトーンや政策の具体性では、相手が勝っていたからです。
ところが、史上初のテレビによる討論会が開始されたのをきっかけに、形勢は一気に逆転します。
モノクロの画面に映し出されるエディは、日焼けした肌に白い歯を輝かせ、自信に満ち溢れて見えました。一方の対立候補は、額に汗をかき、シワの目立つ灰色のスーツが背景に溶け込んで、ひどく疲れた老人としか映っていなかったのです。
エディが笑えば画面の向こうの視聴者も自然と笑い、彼が語ればその言葉はまるで心の奥に直接届くようでした。国民は彼の姿に、この自由の大国が持つ理想の未来を重ねて見ていたのです。
「私の言った通りだったろう、エディ。国民はお前の言葉を聞いているんじゃない。お前の姿を見ているんだ」
そのように語ったジョージは、すでに勝利を確信していました。
アルサトラの言った通り、テレビという魔法の箱は、真実よりもイメージを、理屈よりも感情を、瞬時に何百万人の脳裏へ植え付ける装置だったのです。
ニューフロンティアというスローガンを高らかに掲げるエディの姿に、国民はこの国の輝ける未来を重ねました。
こうして、エディはまるで時代そのものに押し上げられるようにして、権力の頂点へと至る大統領選の舞台へと立たされていったのです。
もっとも、彼自身にはまだ、自分がどれほど大きな渦の中心にいるのかを、理解する余地などなかったのですが。




