街に来てほしいと言われたので、行かないことにしました
朝。
起きている。
動く理由はない。
【省エネ成長:安定上昇】
「完璧」
「ユウトー!来てる来てる来てる!」
「来てない」
ドアが開く。ミリアのテンションが異常に高い。
嫌な予感が具体的になってきた。
「ギルドから正式な使者!」
「帰ってもらって」
「まだ会ってもないでしょ!」
セリスが続いて入ってくる。
「カレンのところからよ。街のギルド本部」
「行かない」
「まだ誘われてないわ」
「予防」
大事だ。先手必勝。
「お兄ちゃん、すごい人みたいだよー」
「すごくない」
ルナが窓の外を覗く。
……見ない。絶対に見ない。
「師匠!栄誉ですよ!」
「違う」
リィナまで来た。四面楚歌。
「とりあえず会うだけでいいから!」
「会わない」
だがそのとき。
【生活最適化:最小接触で最大情報を取得します】
「……短時間?」
「え、何?」
「すぐ終わるなら」
口が滑った。
「終わらせる!絶対!」
連れていかれた。
俺の意思ではない。
広場。
昨日の冒険者たちに混じって、一人だけ雰囲気の違う男が立っている。
黒いコート。整った姿勢。無駄がない。
「君がユウトくんだね」
「違う可能性はある」
名乗らないのは大事だ。
「私はレイン。王都ギルドからの使者だ」
「そう」
帰りたい。
「本題に入ろう」
「帰る」
「待ってくれ」
逃げようとしたが、前に一歩出られた。
速い。
「街に来てほしい」
「行かない」
即答。
「理由は?」
「面倒」
静寂。
「……正直だね」
「そう」
レインは少しだけ笑った。
「だが、君の力は村に収まるものではない」
「収まってる」
現に今、布団が恋しい。
「正式な測定を受けてほしい」
「受けない」
「報酬も出る」
「いらない」
揺らがない。
「では、条件を出そう」
「出さない」
会話が逆方向に進む。
「滞在は一日だけでいい」
「行かない」
「移動は最短で用意する」
「行かない」
「何もしなくていい」
「……それは」
一瞬、思考が止まる。
【生活最適化:条件評価中】
「……近い?」
自分で言ってしまった。
「半日で往復できるよう手配する」
「人少ない?」
「時間を選べば」
セリスが横から小声で言う。
「ほぼ貸切にできるわ」
ミリアも乗ってくる。
「私たちも一緒に行くし!」
ルナは笑顔でうなずく。
「お弁当もってく!」
リィナは目を輝かせる。
「見学します!」
逃げ道が、細い。
「……やっぱり行かない」
引き戻した。
「今ので!?」
ミリアが叫ぶ。
「人が多いのは無理」
「減らす!」
「待つのが無理」
「待たせない!」
レインが一歩踏み出す。
「ではこうしよう」
嫌な予感。
「測定器を、ここに持ってくる」
「来なくていい」
だが、周囲の空気が変わった。
「ここで……?」
「村で測定……?」
ざわつき。
「それなら移動は不要だ」
「不要はいい」
一瞬、理にかなっている。
【生活最適化:最小労力ルートを推奨】
「……短時間?」
「すぐ終わる」
レインがうなずく。
「触れるだけでいい」
「触らない」
警戒は大事だ。
「触れなくても測れる方式もある」
「それはいい」
よくない流れだ。
「じゃあ決まりね!」
「決まってない」
ミリアが勝手に締める。
「明日、機材が来るわ」
「来なくていい」
セリスが冷静に補足する。
「もう手配されてる顔してるわよ」
レインが微笑む。
「迅速が売りでね」
「売らなくていい」
終わった。
「じゃあ明日ね!」
「来ないで」
解散した。
なぜか決定事項だけが残った。
家に戻る。
布団に倒れる。
「……疲れた」
「何もしてないでしょ」
「それが疲れる」
【省エネ成長:上昇】
「まあいい」
移動しないなら、まだマシだ。
「寝る」
それが一番、効率がいい。
【次回:村に測定器が来て、でも触ってないのに数値が壊れます】




