世界の外から観測されているらしいですが、関係ないので寝ています
夜。
寝ている。
今日は本当に、静かだ。
人の気配も、神の気配も、何もない。
空気が、ただある。
【省エネ成長:静穏維持】
「……いい」
この状態が一番いい。
何も来ない。
何も起きない。
そのはずだった。
――“外側”が、少しだけ触れた。
「……やめてほしい」
呟く。
音はない。
気配もない。
だが、“視線”だけがある。
上でも下でもない。
内でも外でもない。
“枠の外”からの視線。
「……知らない」
知らないことにする。
【生活最適化:干渉最小化】
空気が整う。
だが、消えない。
“視線”は、そのままある。
観測されている。
ただ、それだけ。
「……帰って」
先に言う。
沈黙。
そして。
声ではない“何か”。
『……記録不能』
「知らない」
知らないことにする。
『定義不可能』
「いい」
それでいい。
『干渉不可』
「そうして」
それが一番いい。
“視線”が、わずかに揺れる。
『観測継続』
「やめて」
できればやめてほしい。
だが、やめないらしい。
『現象:無為』
「違う」
名前をつけないでほしい。
『入力なし、出力あり』
「知らない」
知らない。
『因果不一致』
「いい」
どうでもいい。
沈黙。
その沈黙は、今までのものと違う。
“考えている”沈黙。
『……理解不能』
「そう」
それでいい。
理解しなくていい。
『危険性:不明』
「ない」
たぶん。
“視線”が、少しだけ離れる。
だが、完全には消えない。
『干渉は行わない』
「そうして」
正解だ。
『観測のみ』
「減らして」
できれば。
沈黙。
そして。
『……他観測体に共有』
「やめて」
広げないでほしい。
だが止まらない。
【誤解誘導が発動しました】
『高位安定存在』
『外部干渉無効領域』
「違う」
違うが、もう届かない。
“視線”が、さらに増える。
一つ。
二つ。
三つ。
数えられない。
「……多い」
やめてほしい。
だが。
【無意識スキル発動:環境完全最適化】
空気が整う。
その瞬間。
“視線”たちが、同時に止まる。
『……』
沈黙。
そして。
『観測対象:固定』
『変動なし』
『……安定』
「……いい」
それでいい。
変わらないなら、それでいい。
“視線”たちが、少しだけ遠ざかる。
完全には消えない。
だが、距離を取る。
『結論:干渉不要』
「そうして」
ようやく、まともな判断だ。
『観測のみ継続』
「やめて」
最後までやめない。
だが。
それ以上は、何も起きない。
静寂が戻る。
「……終わり」
本当に終わった。
【省エネ成長:極大上昇】
「いいね」
何もしていないのに、何かが決まった。
そのとき。
ドアが開く。
「ユウト!」
「いない」
ミリアだ。
「今、空が変じゃなかった?」
「知らない」
セリスも続く。
「星の配置が一瞬ズレたわ」
「知らない」
ルナが不安そう。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫」
リィナは震えている。
「師匠……世界の外が……!」
「違う」
ナギが静かに言う。
「観測、増えた」
「減らして」
無理だろう。
ナギは小さく頷く。
「でも干渉ない」
「それでいい」
それが一番いい。
ミリアが笑う。
「また何もしてないのに終わった?」
「してない」
だが終わっている。
セリスが小さく呟く。
「もう“世界の外”まで行ったわね」
やめてほしい。
「……帰る」
というか、もういる。
布団へ。
「……疲れた」
本当に何もしていないのに。
「ユウト、次は何来るの」
「来ない」
来ないでほしい。
ルナは元気だ。
「お兄ちゃんすごーい!」
「違う」
リィナは涙目。
「師匠……観測を……!」
「違う」
ナギが小さく言う。
「外部、静観モード」
それでいい。
【省エネ成長:限界突破】
「いいね」
何もしないほど、全部うまくいく。
「寝る」
目を閉じる。
外は静かだ。
世界の内側も、外側も。
少しだけ距離を取っている。
それが、ちょうどいい。
「……知らない」
【次回:なぜか“作者視点っぽい干渉”が発生しますが、無視します】




