他の神っぽい存在が来ましたが、関わりたくないので寝ています
夜。
寝ている。
ちゃんと寝ている。
今日は誰にも起こされていない。
完璧だ。
【省エネ成長:静穏上昇】
「……いい」
外が、静かだ。
ここ最近で一番静かだ。
人はいる。
増えているはずだ。
だが――
“気配”が引いている。
まるで、何かに遠慮しているみたいに。
風が止まる。
音が消える。
「……やめてほしいやつだ」
呟く。
起きない。
起きないが、起きている。
【生活最適化:外部異常を検知】
「……寝る」
無視する。
だが。
“それ”は、入ってきた。
音もなく。
気配もなく。
ただ、そこに“いた”。
「――」
目は閉じている。
見ていない。
だが、わかる。
“人ではない”。
重さが違う。
密度が違う。
「……帰って」
先に言う。
沈黙。
そして。
「……面白い」
声。
低くも高くもない。
どこにも引っかからない声。
「……帰って」
繰り返す。
「目を開けないのか」
「開けない」
重要。
沈黙。
数秒。
「なるほど」
納得された。
【誤解誘導が発動しました】
「視覚に頼らないのか」
「やめて」
違う。
ただ面倒なだけだ。
気配が、少しだけ近づく。
重い。
だが、圧迫ではない。
「……お前が“静神”か」
「違う」
即答。
沈黙。
そして、わずかに笑う気配。
「否定するのか」
「する」
当然だ。
「……面白い」
またそれだ。
気配が、部屋の中をゆっくり動く。
何かを“確認”しているような動き。
「人のまま、ここまで来たか」
「来てない」
勝手に来たことにしないでほしい。
「干渉の痕跡がない」
「ない」
ないのは正しい。
「だが結果だけがある」
「知らない」
知らないことにする。
沈黙。
少しだけ、空気が揺れる。
【無意識スキル発動:環境完全最適化】
空気が整う。
その瞬間。
“それ”の気配が、わずかに止まる。
「……なるほど」
今度の“なるほど”は、少し重い。
「これか」
「違う」
違うが、もう遅い。
「無為、か」
「違う」
名前をつけないでほしい。
「干渉しないことで、すべてを整える」
「してない」
していない。
だが。
気配が、少しだけ下がる。
ほんのわずか。
だが明確に。
「……理解した」
「してない」
していないのに、される。
「これは、触れないほうがいい」
「そう」
それは正しい。
ぜひ帰ってほしい。
「均衡を崩す」
「帰って」
お願いだから帰ってほしい。
沈黙。
そして。
「一つだけ聞く」
「聞かない」
だが止まらない。
「お前は、何を望む」
「何も」
即答。
嘘ではない。
本当に何も望んでいない。
沈黙。
長い沈黙。
そのあと。
「……そうか」
納得された。
【誤解誘導が発動しました】
「だから“満ちている”のか」
「違う」
違うが、もう止まらない。
気配が、少し遠ざかる。
「関わらない」
「そうして」
正解だ。
「他の連中にも伝える」
「伝えないで」
広げないでほしい。
「この領域には、触れるなと」
「……いい」
それならいい。
むしろ助かる。
気配が、さらに遠ざかる。
消える寸前。
「……名を持たないのは、強いな」
「持ってる」
ユウトだ。
だが返事はない。
消えた。
完全に。
静寂。
「……終わった」
本当に終わった。
【省エネ成長:大幅上昇】
「いいね」
何もしていないのに、何かが片付いた。
そのとき。
ドアが勢いよく開く。
「ユウト!!」
「いない」
ミリアだ。
珍しく焦っている。
「今、何か来なかった!?」
「知らない」
知らない。
セリスも入ってくる。
「外の空気が一瞬変わった」
「知らない」
ルナが不安そうだ。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫」
リィナは震えている。
「師匠……神の気配が……!」
「違う」
そのとき。
ナギが静かに言う。
「干渉、消えた」
「そう」
それでいい。
「誰か来てた」
「知らない」
知らないことにする。
ナギは少しだけこちらを見る。
「……理解した」
「してない」
やめてほしい。
ミリアが笑う。
「また何もしてないのに解決した?」
「してない」
だが、解決はしているらしい。
セリスが小さく言う。
「外部の“何か”が、引いた」
それでいい。
「……帰る」
というか、もういる。
布団へ。
「……疲れた」
本当に何もしていないのに。
「ユウト、今度は何?」
「知らない」
ミリアが笑う。
「どこまで行くのこれ」
「行かない」
行っていない。
ルナは元気だ。
「お兄ちゃんすごーい!」
「違う」
リィナは涙目だ。
「師匠……神を……!」
「違う」
ナギが小さく呟く。
「上位存在、回避」
それでいい。
【省エネ成長:極大上昇】
「いいね」
何もしないほど、全部うまくいく。
「寝る」
目を閉じる。
外は静かだ。
今までで一番、静かだ。
誰も、近づこうとしない。
世界が、少しだけ距離を取った。
「……知らない」
【次回:なぜか“世界の外側っぽいもの”が観測され始めますが、関係ありません】




