聖地になって建物が建ち始めましたが、許可していません
朝。
起きている。
目は閉じている。
これは寝ている。
【省エネ成長:安定上昇】
「完璧」
外が、妙に整っている。
静か、ではない。
“整然としている”。
音の粒が、きれいに並んでいる感じ。
足音、話し声、物音。
全部がぶつからずに流れている。
「ユウトー……」
「いない」
ドアの向こう、ミリアの声。
今日は少し疲れている。
「いるでしょ」
「いない」
開いた。
「……増えた」
「減らして」
先に言う。
「無理」
即答された。
セリスが後ろから入ってくる。
「村の構造が変わり始めてるわ」
「変えないで」
やめてほしい。
「お兄ちゃん、外すごいよー」
「見ない」
ルナの声が弾んでいる。
見ない。
「師匠……ついに形に……!」
「違う」
リィナの震えが安定している。
良くない意味で。
だが。
【生活最適化:状況把握を強く推奨】
「……一瞬」
また負けた。
外へ。
「……やめて」
まず、道が変わっていた。
昨日まで土だった場所が、石になっている。
しかも整っている。
無駄に真っ直ぐ。
「……誰が」
ミリアが指をさす。
「みんな」
視線の先。
人がいる。
大量に。
だが、ただの人ではない。
作っている。
建物を。
「……やめて」
木材。
石材。
手際がいい。
明らかに素人ではない。
「巡礼者の中に職人が混ざってたみたい」
セリスが淡々と言う。
「暇を持て余してたのね」
「余らせないで」
やることはあるはずだ。
だが建物はすでに形になっている。
白。
やけに白い。
「なんで白」
「清浄の象徴らしいよ」
ミリアが笑う。
「誰が決めたの」
「たぶん、勝手に」
だろう。
中央には、大きな空間ができている。
「……何あれ」
円形。
広場。
中央に何もない。
「“静止の場”だって」
「いらない」
名前がついている時点でアウト。
その周囲に、柱。
屋根。
「……屋根いらない」
「雨でも修行できるようにって」
「修行してない」
完全にズレている。
そのとき。
「おはようございます」
リオナだ。
今日も元気だ。
「進んでいます」
「やめて」
進まなくていい。
「聖地化、順調です」
「してない」
言葉が強い。
「許可してない」
重要。
「黙認と判断しました」
「してない」
勝手すぎる。
リオナが手帳をめくる。
「第一段階:巡礼導線の整備」
「整備しない」
「第二段階:滞在施設の設置」
「設置しない」
「第三段階:象徴建造物の建設」
「建てない」
だが。
すでに半分できている。
「……早い」
「人が多いので」
単純な理由で押し切られている。
そのとき。
「ユウト!」
ミリアが呼ぶ。
「見て」
「見ない」
だが視界に入る。
中央。
さっきの円形の場所。
人が、集まっている。
静かに。
「……やめて」
全員が目を閉じる。
「第一段階:静止」
声が揃う。
「第二段階:同調」
呼吸が揃う。
【無意識スキル発動:環境最適化】
空気が整う。
「……また」
やめてほしい。
「第三段階:無為」
完全に止まる。
その瞬間。
空間が、変わる。
軽い。
呼吸が楽になる。
「……強い」
セリスが呟く。
「これ、場として機能してる」
「してない」
してほしくない。
だが。
外からさらに人が来る。
「ここが……!」
「聖地……!」
ワードが強い。
【誤解誘導が発動しました】
「“無為王”の加護が……」
「空気が違う……!」
やめて。
リオナが満足そうに頷く。
「良い流れです」
「よくない」
「次は象徴を」
「いらない」
嫌な予感。
「像を建てましょう」
「やめて」
最悪だ。
「簡素なもので構いません」
「構わないで」
だが、周囲の反応は違う。
「必要だ……!」
「象徴があれば導きが……!」
増幅していく。
「……帰る」
限界。
だがそのとき。
「お兄ちゃん!」
ルナが指さす。
中央。
誰もいないはずの場所。
そこに――
小さな、石。
ぽつんと置かれている。
「……あれ」
見覚えがある。
昨日、転がっていた石だ。
「誰が置いたの」
「自然に、らしいよ」
意味がわからない。
だが。
人々が、その石に向かって頭を下げる。
「やめて」
完全に象徴になっている。
「……帰る」
もう無理だ。
家へ。
布団へ。
「……疲れた」
本当に何もしていないのに。
「ユウト、どうするの」
ミリアが笑いながら聞く。
「どうもしない」
それしかない。
セリスが静かに言う。
「場所が完成すると、もう止まらない」
知っている。
だから嫌だった。
ルナは嬉しそうだ。
「お兄ちゃんの場所!」
「違う」
リィナは涙目だ。
「師匠……聖域……!」
「違う」
【省エネ成長:大幅上昇】
「いいね」
何もしないほど、全部進む。
「寝る」
目を閉じる。
外では、今日も建物が増えている。
静かに。
確実に。
「……知らない」
【次回:なぜか“国外からも来訪者”が増えて、言葉が通じない人が増えます】




