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前世社畜の俺、スローライフを望んだのに気づけばステータスだけが勝手にカンストしてる件  作者: ローナ


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20/26

聖地になって建物が建ち始めましたが、許可していません

 朝。


 起きている。


 目は閉じている。


 これは寝ている。


【省エネ成長:安定上昇】


「完璧」


 外が、妙に整っている。


 静か、ではない。


 “整然としている”。


 音の粒が、きれいに並んでいる感じ。


 足音、話し声、物音。


 全部がぶつからずに流れている。


「ユウトー……」


「いない」


 ドアの向こう、ミリアの声。


 今日は少し疲れている。


「いるでしょ」


「いない」


 開いた。


「……増えた」


「減らして」


 先に言う。


「無理」


 即答された。


 セリスが後ろから入ってくる。


「村の構造が変わり始めてるわ」


「変えないで」


 やめてほしい。


「お兄ちゃん、外すごいよー」


「見ない」


 ルナの声が弾んでいる。


 見ない。


「師匠……ついに形に……!」


「違う」


 リィナの震えが安定している。


 良くない意味で。


 だが。


【生活最適化:状況把握を強く推奨】


「……一瞬」


 また負けた。


 外へ。


「……やめて」


 まず、道が変わっていた。


 昨日まで土だった場所が、石になっている。


 しかも整っている。


 無駄に真っ直ぐ。


「……誰が」


 ミリアが指をさす。


「みんな」


 視線の先。


 人がいる。


 大量に。


 だが、ただの人ではない。


 作っている。


 建物を。


「……やめて」


 木材。


 石材。


 手際がいい。


 明らかに素人ではない。


「巡礼者の中に職人が混ざってたみたい」


 セリスが淡々と言う。


「暇を持て余してたのね」


「余らせないで」


 やることはあるはずだ。


 だが建物はすでに形になっている。


 白。


 やけに白い。


「なんで白」


「清浄の象徴らしいよ」


 ミリアが笑う。


「誰が決めたの」


「たぶん、勝手に」


 だろう。


 中央には、大きな空間ができている。


「……何あれ」


 円形。


 広場。


 中央に何もない。


「“静止の場”だって」


「いらない」


 名前がついている時点でアウト。


 その周囲に、柱。


 屋根。


「……屋根いらない」


「雨でも修行できるようにって」


「修行してない」


 完全にズレている。


 そのとき。


「おはようございます」


 リオナだ。


 今日も元気だ。


「進んでいます」


「やめて」


 進まなくていい。


「聖地化、順調です」


「してない」


 言葉が強い。


「許可してない」


 重要。


「黙認と判断しました」


「してない」


 勝手すぎる。


 リオナが手帳をめくる。


「第一段階:巡礼導線の整備」


「整備しない」


「第二段階:滞在施設の設置」


「設置しない」


「第三段階:象徴建造物の建設」


「建てない」


 だが。


 すでに半分できている。


「……早い」


「人が多いので」


 単純な理由で押し切られている。


 そのとき。


「ユウト!」


 ミリアが呼ぶ。


「見て」


「見ない」


 だが視界に入る。


 中央。


 さっきの円形の場所。


 人が、集まっている。


 静かに。


「……やめて」


 全員が目を閉じる。


「第一段階:静止」


 声が揃う。


「第二段階:同調」


 呼吸が揃う。


【無意識スキル発動:環境最適化】


 空気が整う。


「……また」


 やめてほしい。


「第三段階:無為」


 完全に止まる。


 その瞬間。


 空間が、変わる。


 軽い。


 呼吸が楽になる。


「……強い」


 セリスが呟く。


「これ、場として機能してる」


「してない」


 してほしくない。


 だが。


 外からさらに人が来る。


「ここが……!」


「聖地……!」


 ワードが強い。


【誤解誘導が発動しました】


「“無為王”の加護が……」


「空気が違う……!」


 やめて。


 リオナが満足そうに頷く。


「良い流れです」


「よくない」


「次は象徴を」


「いらない」


 嫌な予感。


「像を建てましょう」


「やめて」


 最悪だ。


「簡素なもので構いません」


「構わないで」


 だが、周囲の反応は違う。


「必要だ……!」


「象徴があれば導きが……!」


 増幅していく。


「……帰る」


 限界。


 だがそのとき。


「お兄ちゃん!」


 ルナが指さす。


 中央。


 誰もいないはずの場所。


 そこに――


 小さな、石。


 ぽつんと置かれている。


「……あれ」


 見覚えがある。


 昨日、転がっていた石だ。


「誰が置いたの」


「自然に、らしいよ」


 意味がわからない。


 だが。


 人々が、その石に向かって頭を下げる。


「やめて」


 完全に象徴になっている。


「……帰る」


 もう無理だ。


 家へ。


 布団へ。


「……疲れた」


 本当に何もしていないのに。


「ユウト、どうするの」


 ミリアが笑いながら聞く。


「どうもしない」


 それしかない。


 セリスが静かに言う。


「場所が完成すると、もう止まらない」


 知っている。


 だから嫌だった。


 ルナは嬉しそうだ。


「お兄ちゃんの場所!」


「違う」


 リィナは涙目だ。


「師匠……聖域……!」


「違う」


【省エネ成長:大幅上昇】


「いいね」


 何もしないほど、全部進む。


「寝る」


 目を閉じる。


 外では、今日も建物が増えている。


 静かに。


 確実に。


「……知らない」

【次回:なぜか“国外からも来訪者”が増えて、言葉が通じない人が増えます】

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