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前世社畜の俺、スローライフを望んだのに気づけばステータスだけが勝手にカンストしてる件  作者: ローナ


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18/26

災害級の異変が起きていたらしいけど、寝ている間に終わっていました

 夜。


 寝ている。


 ちゃんと寝ている。


 今日は本当に寝ている。


【省エネ成長:緩やか上昇】


「……いい」


 久しぶりに、静かな夜だ。


 外のざわつきもない。


 風も穏やか。


 虫の音だけが、一定のリズムで続いている。


 目を閉じる。


 意識が、ゆっくり沈む。


 そのはずだった。


 遠くで、何かが鳴った。


 低い音。


 地面の奥から響くような、鈍い振動。


 ……気のせいだ。


【生活最適化:外部ノイズ軽減】


 音が、薄れる。


「……寝る」


 意識を落とす。


 完全に。


 ――――


 その頃。


 村の外れ。


 森が、揺れていた。


 風ではない。


 何かが、押し広げるように動いている。


「……来てる」


 ミリアが低く呟く。


 セリスも、静かに頷く。


「昨日の王女の話……当たりね」


 ルナは少しだけ不安そうに、家の方を見る。


「お兄ちゃん……寝てるよね」


「寝てるわね」


 起こすか。


 迷いは一瞬。


「……やめとこ」


 ミリアが言う。


「どうせ起きないし」


「それもそうね」


 妙な納得。


 だが、森の奥から“それ”は出てきた。


 黒い影。


 大きい。


 いや、大きすぎる。


「……何あれ」


 誰かが呟く。


 答えはない。


 ただ一つだけ、わかることがある。


「災害級」


 セリスの声が、少しだけ硬い。


 空気が、重くなる。


 呼吸がしづらい。


「やばいね、これ」


 ミリアが笑う。


 笑っているが、目は笑っていない。


 影が、ゆっくりと動く。


 村の方へ。


 そのとき。


 風が、止まった。


 完全に。


「……え?」


 ルナが顔を上げる。


 音が消える。


 虫の音も、木のざわめきも。


 すべてが、一瞬で“均一”になる。


【無意識スキル発動:環境完全最適化】


 空気が、整う。


 それは、優しい。


 だが同時に――


 圧倒的だった。


 影が、止まる。


「……動かない?」


 ミリアが目を細める。


 黒い存在が、ぴたりと止まる。


 次の瞬間。


 スッ、と。


 消えた。


「……は?」


 誰も動かない。


 音が戻る。


 虫の声。


 風。


 すべてが、何事もなかったように流れ始める。


「……終わった?」


 ルナが小さく言う。


 セリスが周囲を確認する。


「……消えたわね」


 ミリアが肩をすくめる。


「何これ」


 誰も答えない。


 ただ一つだけ。


 全員が、同じ方向を見る。


 家。


「……寝てるわね」


 セリスが呟く。


 ミリアが笑う。


「だよね」


 ――――


 朝。


 起きている。


 目は閉じている。


 これは寝ている。


【省エネ成長:安定上昇】


「完璧」


 外が、やけに静かだ。


 昨日の夜のざわつきも、何も残っていない。


「ユウトー!」


「いない」


 ドアが開く。


「終わったよ!」


「何が」


 聞いてしまった。


「全部!」


 雑だ。


「災害級!」


「知らない」


 知らない。


 セリスが静かに説明する。


「巨大な魔物が出たわ」


「知らない」


「村に来る直前で消えた」


「よかった」


 それでいい。


「心当たりは?」


「ない」


 即答。


 ルナが嬉しそうに言う。


「お兄ちゃん、寝てた!」


「寝てた」


 重要。


 ミリアがニヤニヤしている。


「タイミング完璧だね」


「知らない」


 そのとき。


 コンコン。


 ノック。


「……多い」


「入るわ」


 アリシアだ。


 第二王女。


「報告です」


「いらない」


 だが彼女は続ける。


「昨夜、各地で同様の現象が確認されました」


「知らない」


「すべて同時に収束」


「よかった」


 それでいい。


「原因は不明」


「そう」


 知らない。


 アリシアは、じっとこちらを見る。


「本当に?」


「知らない」


 風が、少しだけ整う。


【誤解誘導が発動しました】


「……なるほど」


 また納得された。


「やめて」


 やめてほしい。


「今回は感謝します」


「してない」


 していないのに、される。


「国としても対応を続けます」


「続けて」


 任せる。


 アリシアは軽く頭を下げて去っていった。


 静寂。


「……なんだったの」


 ミリアが笑う。


「災害だったらしいよ」


「終わったならいい」


 セリスが小さく言う。


「規模が大きくなってきたわね」


 やめてほしい。


 ルナは元気だ。


「お兄ちゃんすごい!」


「違う」


 リィナは震えている。


「師匠……もはや……」


「違う」


【省エネ成長:大幅上昇】


「いいね」


 何もしないほど、全部うまくいく。


「寝る」


 目を閉じる。


 外は静かだ。


 だがその静けさは――


 昨日より、さらに“広い”。


「……知らない」

【次回:なぜか“宗教っぽいもの”ができ始めますが、関係ありません】

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