大会が開催されるらしいけど参加してないのに優勝してました
朝。
起きている。
目は閉じている。
これは寝ている。
【省エネ成長:安定上昇】
「完璧」
外が騒がしい。
もう慣れた。
慣れたくなかったが、慣れてしまった。
「ユウトーーーー!!!」
「いない」
ドアが開く。ミリアだ。
今日も元気だ。
「大会!!」
「出ない」
即答。
「まだ説明してない!」
「出ない」
内容はどうでもいい。
結論は同じだ。
セリスが入ってくる。
「街主催の大会よ」
「出ない」
「“無為流”限定の」
「出ない」
完全に嫌な流れ。
「お兄ちゃん、すごい人いっぱい来てるよー!」
「見ない」
ルナが楽しそうに窓の外を見ている。
見ない。
「師匠!ついに頂点決定戦が!」
「違う」
リィナはもう止まらない。
「優勝したらどうする!?」
「しない」
しない。
「参加しないから!」
大事なことなので強く言った。
だが、そのとき。
【生活最適化:外部イベント発生】
「……関係ない」
先に言っておく。
コンコン。
ノック。
「……多い」
「入るわ」
リオナだ。
「順調です」
「やめて」
もう聞き飽きた。
「大会、始まります」
「出ない」
先に言う。
「エントリー済みです」
静寂。
「……は?」
「“無為流・創始者ユウト”として」
「してない」
完全にアウト。
「代表枠です」
「やめて」
勝手すぎる。
「辞退は?」
「不可です」
早い。
「もうトーナメント表に組み込まれています」
「抜ける」
「不戦勝になります」
「いい」
それでいい。
だが。
「その場合、次も不戦勝です」
「いい」
「さらに次も」
「いい」
楽だ。
完璧だ。
ミリアがニヤニヤしている。
「それってさ」
嫌な顔だ。
「優勝するんじゃない?」
「しない」
断言。
セリスが小さく頷く。
「理論上は可能ね」
「やめて」
だが。
外から声が聞こえる。
「第一試合終了!!」
「無為流の勝利!!」
「……?」
何もしてない。
「第二試合も不戦勝!」
早い。
「準決勝進出!」
進まないでほしい。
【誤解誘導が発動しました】
「さすが……姿すら見せない……」
「“無為”の極地……!」
やめて。
「違う」
だが止まらない。
時間が進む。
何もしていない。
それなのに。
「決勝戦開始!!」
「早い」
ミリアが笑っている。
「ここまで全部不戦勝だよ?」
「いい」
それでいい。
だが。
「対戦相手は……」
一瞬、静まる。
「無為流・創始者ユウト!!」
「いる」
呼ばれている。
「来てません!!」
実況が焦っている。
「不戦勝扱いとなります!!」
歓声。
「……終わり?」
セリスが呟く。
次の瞬間。
「優勝者、ユウト!!」
爆発する歓声。
「……やめて」
やめてほしい。
ミリアが肩を震わせている。
「優勝だって」
「してない」
リィナは涙目だ。
「師匠……圧倒的……!」
「違う」
ルナは拍手している。
「お兄ちゃんすごーい!」
「すごくない」
だが。
【資源流入:大幅増加】
「優勝賞金です」
リオナが袋を差し出す。
「多い」
重い。
明らかに重い。
「あと称号も」
「いらない」
「“無為王”です」
「やめて」
ネーミングが強すぎる。
「街ではもう定着しています」
終わった。
「……帰る」
限界だ。
布団へ直行。
「……疲れた」
本当に何もしていないのに。
「ユウト、優勝したね」
「してない」
ミリアが笑う。
「でも記録上はね」
セリスも頷く。
「公式優勝よ」
ルナが嬉しそうだ。
「お兄ちゃん一番!」
「違う」
リィナは完全に尊敬している。
「師匠……頂点……!」
「違う」
【省エネ成長:大幅上昇】
「いいね」
何もしないほど、全部うまくいく。
「寝る」
目を閉じる。
外では、まだ歓声が続いている。
「……知らない」
【次回:なぜか“王都に呼び出し”が来ますが、行きません】




