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前世社畜の俺、スローライフを望んだのに気づけばステータスだけが勝手にカンストしてる件  作者: ローナ


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13/26

行ってないのに、“俺の店”が大繁盛してました

朝。


 寝ている。


 起きてはいるが、目は閉じている。


 これは寝ている。


【省エネ成長:安定上昇】


「完璧」


 外が騒がしい。


 最近はこれがデフォルトだ。


 慣れたくないが、慣れてきた。


「ユウトー!!」


「いない」


 ドアが開く。ミリアだ。


 テンションが異常に高い。


「オープンした!!」


「してない」


 何が。


「お店!!」


「知らない」


 知りたくない。


「ユウトの店!」


「違う」


 違うのに、確信されている。


「行くよ!」


「行かない」


 即答。


「様子だけでも!」


「見ない」


 だが、セリスが静かに言う。


「見た方がいいわ」


「よくない」


「もう止まらないもの」


 嫌な言葉だ。


「お兄ちゃん、すごい人だよー!」


「見ない」


 ルナが窓から外を見ている。


 絶対に見ない。


「師匠、ついに世界が……!」


「違う」


 リィナは今日も元気だ。


 だが、そのとき。


【生活最適化:状況把握を推奨】


「……遠い?」


 聞いてしまった。


「すぐそこ!」


 ミリアの即答。


「……一瞬」


 それなら。


 立ち上がる。


「やった!!」


 また負けた。


 広場。


「……多い」


 人、人、人。


 村じゃない密度だ。


「何あれ……」


「列できてる……」


 長い列。


 明らかに異常。


 その先に――


「……ある」


 店があった。


 看板。


 【ユウトの台所】


「やめて」


 完全にアウト。


「かわいい名前でしょ!」


「よくない」


 ミリアが笑う。


「中入る?」


「入らない」


 だが、流れで入った。


 俺の意思ではない。


 店内。


 人で溢れている。


 料理の匂いが、やけにいい。


「いらっしゃいませー!」


 元気な声。


 見たことない店員たち。


「……誰」


 カウンターの奥。


 見慣れた顔。


「やあ」


 リオナだ。


「順調です」


「やめて」


 何も順調じゃない。


「初日でこの行列。予想以上ですね」


「してない」


 俺は何もしていない。


「味は?」


 セリスが聞く。


 リオナが笑う。


「完璧です」


 嫌な予感。


「どうやって」


 ミリアが身を乗り出す。


「再現しました」


「無理でしょ」


 その通り。


「完全再現は不可能です」


 正直だ。


「ですが」


 リオナが指を立てる。


「“それっぽくなる環境”を再現しました」


 嫌なワード。


「風、温度、配置」


 どこかで聞いた話だ。


「そして」


 一瞬、視線がこちらに来る。


「名前」


「やめて」


 それが一番ダメだ。


「“ユウト監修”」


「してない」


 完全にアウト。


「でも美味しいよー!」


 ルナが何か食べている。


「どこから」


「もらった!」


 早い。


 ミリアも一口。


「……え」


 固まる。


「なにこれ」


 セリスも食べる。


「……近い」


 まさか。


「ほんとに?」


 俺も一口。


【生活最適化:味覚補正】


「……近いな」


 やめてほしい。


「でしょ?」


 リオナが笑う。


「“ユウトがいなくても、ユウトっぽい”」


 最悪の完成度だ。


「やめて」


 だが、店は回っている。


「次の方どうぞー!」


「完売間近です!」


 活気がすごい。


「利益も順調です」


「いらない」


 だが。


【資源流入:増加】


「……多いな」


 袋が渡される。


 重い。


「初日の分です」


「多い」


「これでも控えめです」


 控えてこれか。


 そのとき。


「……あの」


 新しい声。


 振り向くと、一人の少女。


 エプロン姿。少し緊張した顔。


「ここで働かせてください!」


「しない」


 即答。


「あなたに言ってないです!」


 怒られた。


「でも、この味を作ってる人に……!」


「してない」


 リオナが割り込む。


「採用です」


 早い。


「えっ」


 少女が驚く。


「人手は多い方がいい」


 正論だが、巻き込みが早い。


「ありがとうございます!」


 増えた。


「……増えた」


 セリスが呟く。


「無限に増えるわね」


 やめてほしい。


 外。


「売り切れだー!」


「もう終わりか!」


 騒ぎがさらに大きくなる。


「……帰る」


 限界だ。


「え、もう!?」


「もう」


 即撤退。


 家に戻る。


 布団に倒れる。


「……疲れた」


 何もしていないのに。


「ユウト、すごかったね」


「すごくない」


 ルナが笑う。


「お兄ちゃんのお店!」


「違う」


 ミリアがニヤニヤしている。


「でも売れてるね」


「知らない」


 セリスが静かに言う。


「もう止まらないわね」


 止まってほしい。


【省エネ成長:大幅上昇】


「いいね」


 何もしないほど、全部うまくいく。


「寝る」


 それが一番、効率がいい。

【次回:なぜか“弟子が増えすぎて”修行が始まりますが、何も教えません】

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