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前世社畜の俺、スローライフを望んだのに気づけばステータスだけが勝手にカンストしてる件  作者: ローナ


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12/26

噂が街中に広がっているらしいけど、本人は寝ています

 昼。


 寝ている。


 正確には、起きているが目を閉じている。


 これは寝ているのと同じだ。


【省エネ成長:安定上昇】


「完璧」


 外がやけに静かだ。


 ……いや、静かすぎる。


 嫌な静けさだ。


「ユウトー……」


「いない」


 ドアの向こうから、妙に落ち着いたミリアの声。


「いるでしょ」


「いない」


 開いた。


「来てる」


「来てない」


 短い応酬。


 だが、いつもと違う。


「今度は“手紙”」


「読まない」


 新しいパターンだ。


「王都からよ」


「捨てて」


 セリスが後ろから入ってくる。


「もう開けたわ」


「やめて」


 勝手に進んでいる。


「お兄ちゃん、すごい紙だよー」


「見ない」


 ルナがひらひらさせる。


 金の縁取り。無駄に豪華。


「師匠、ついに正式に……!」


「違う」


 リィナの期待値が天井に近い。


「読むわよ」


 セリスが淡々と読み上げる。


「“王都商業連合より。貴殿の調理技術および影響力について確認したく――”」


「知らない」


 もう一枚。


「“冒険者ギルド中央本部より。測定不能の件につき――”」


「知らない」


 さらに一枚。


「“騎士団より。先日の件に関する正式な謝辞と――”」


「知らない」


 多い。


「全部、あなた宛てよ」


「違う」


 違うのに、集まってくる。


【誤解誘導が発動しました】


「完全に広がってるわね」


 セリスがため息をつく。


「どこまで?」


「街どころじゃないわ。王都レベル」


 やめてほしい。


「じゃあ行こう!」


「行かない」


 ミリアの提案を即否定。


「様子見だけでも!」


「見ない」


 だが、そのとき。


 コンコン。


 ノック。


 まただ。


「……多い」


「入るわよ」


「よくない」


 開いた。


 入ってきたのは、一人の少女。


 年齢はミリアと同じくらい。


 淡い金髪。整った服装。無駄に上品。


 そして――


 目が、完全に商売人。


「初めまして」


 軽く頭を下げる。


「私はリオナ。王都商業連合の代表代理です」


「そう」


 帰ってほしい。


「噂は聞いております」


「聞かなくていい」


 だがリオナは笑った。


「“何もしないのに結果を出す少年”」


「違う」


 その呼び方やめてほしい。


「本日はご提案に参りました」


「いらない」


 即拒否。


「商品化です」


「しない」


 早い。


「あなたの料理」


「してない」


 事実だ。


「あなたの存在」


「やめて」


 それは商品じゃない。


「ブランド化すれば、王都でも通用します」


「しない」


 ぶれない。


「何もする必要はありません」


「それは」


 一瞬止まる。


【生活最適化:条件評価中】


「……何もしない?」


 確認。


「ええ。名前を貸すだけで」


「貸さない」


 危ない。


 ギリギリだった。


「では、監修だけでも」


「しない」


 完璧な拒否。


 リオナは少しだけ目を細めた。


「……なるほど」


 なぜか納得された。


【誤解誘導が発動しました】


「安売りはしないタイプですね」


「違う」


 違うが、もう流れは止まらない。


「価値を理解している」


「してない」


 評価が勝手に育っていく。


「では、別の形で」


 嫌な予感。


「こちらで展開させていただきます」


「やめて」


 間に合わない。


「“監修:ユウト”として」


「してない」


 やめてほしい。


 だがリオナはすでに手帳に何か書いている。


「初動は街から。すぐに広げます」


「広げないで」


 止まらない。


「利益の一部は還元します」


「いらない」


 だが。


【生活最適化:資源流入】


「……多いなら」


 つい言ってしまった。


「多くします」


 即答された。


 しまった。


「じゃあ決まりですね」


「決まってない」


 完全に決まっている顔だった。


「また報告に来ます」


「来なくていい」


 リオナは軽く頭を下げて、出ていった。


 静寂。


「……何これ」


 ミリアが笑いをこらえている。


「もう止まらないね」


「止めて」


 セリスが頷く。


「街どころか、王都に入ったわね」


 ルナは楽しそうだ。


「お兄ちゃん、有名人!」


「違う」


 リィナは震えている。


「師匠……伝説が……」


「違う」


【省エネ成長:大幅上昇】


「いいね」


 結局、何もしていない。


 だが、全部進んでいる。


「寝る」


 布団に倒れる。


 外では、また誰かが騒いでいる。


 たぶん、全部俺のことだ。


「……知らない」


 目を閉じる。

【次回:なぜか“ユウトの店”が勝手にオープンします】

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