指名依頼が来たけど断ったのに、なぜか解決してました
朝。
起きている。
動く予定は、ない。
布団の上で天井を見ていると、昨日のことが少しだけ思い出される。
思い出したくない。
【省エネ成長:安定上昇】
「完璧」
外が少し騒がしい。
……最近、静かな日がない気がする。
「ユウトー!来てる!」
「来てない」
ドアが開く。ミリアだ。
最近この流れがテンプレ化している。
「今度は何」
「指名依頼!」
「ない」
即否定。
「あるの!」
「受けない」
まだ内容も聞いていないが、結論は出ている。
「話だけでも聞いて!」
「聞かない」
だが、すでに外に人の気配がある。
逃げ場はない。
「お兄ちゃん、すごそうな人いるよー」
「見ない」
ルナの報告はだいたい正しい。
だからこそ見ない。
「ユウト、今回は少し厄介よ」
セリスが腕を組む。
「断る」
先に言っておく。
「王都からよ」
「断る」
即答。
「まだ何も言ってないわよ?」
「関係ない」
大きい話ほど面倒だ。
「師匠!伝説級の依頼かもしれません!」
「違う」
リィナの期待値が高すぎる。
「とりあえず外に」
「行かない」
だが、そのとき。
【生活最適化:最小対応で事態収束が可能】
「……短時間?」
口が滑った。
「終わらせる!」
まただ。
またこの流れだ。
外に出た。
俺の意思ではない。
家の前。
そこには、見慣れない装備の男が立っていた。
鎧は上質。剣もただ者じゃない。
明らかに強い。
「君がユウトか」
「違う」
もはや儀式だ。
「私はグレン。王都騎士団の者だ」
「そう」
帰りたい。
「単刀直入に言う」
「帰る」
「待て」
肩を掴まれた。
速い。
「離して」
「すまない」
すぐに離された。
話は通じるタイプらしい。
「依頼だ」
「断る」
先に言った。
「まだ内容を――」
「断る」
ぶれない。
グレンは一瞬だけ黙った。
「……なるほど」
なぜか納得された。
【誤解誘導が発動しました】
「選別しているわけか」
「違う」
違うが、もう止まらない。
「軽い依頼では動かない、と」
「動かないのはいつも」
正しい。
「ならば内容だけ聞いてほしい」
「聞かない」
だが、グレンは引かない。
「村の外れに“変異種”が出た」
ミリアが反応する。
「変異種……?」
セリスも目を細める。
「普通の魔物じゃないわね」
興味がない。
「危険度は高い」
「帰る」
だが。
「すでに何人かやられている」
少しだけ、空気が変わる。
ルナが不安そうにこちらを見る。
「お兄ちゃん……」
面倒だ。
本当に面倒だ。
【生活最適化:被害拡大の防止を推奨】
「……関係ない」
言った。
だが。
体が、わずかに外を向いた。
「行くの!?」
「行かない」
否定した。
強く。
「近い?」
聞いてしまった。
「すぐそこだ」
グレンが答える。
「一撃で終わる?」
「それは……」
言い淀む。
「終わらないなら行かない」
合理的だ。
グレンは少し考えて、言った。
「君なら、終わる」
やめてほしい。
「行かない」
最終結論。
そのとき。
地面が、わずかに揺れた。
「……来たか」
グレンが振り向く。
遠く。
森の方から、嫌な気配が流れてくる。
だが。
俺は動かない。
動かないはずだった。
【自動最適化:脅威排除】
「やめろ」
言ったが、遅い。
風が、動いた。
ただの風。
だが。
次の瞬間。
遠くで、何かが倒れる音がした。
静寂。
「……え?」
ミリアが呟く。
グレンが目を見開く。
「今の……」
誰も、動いていない。
俺も、動いていない。
「知らない」
先に言った。
しばらくして、村人が走ってきた。
「た、倒れてる!変異種が……!」
ざわめきが一気に広がる。
「傷一つない……」
「なんだこれ……」
【誤解誘導が発動しました】
「……まさか」
グレンがゆっくりこちらを見る。
「離れた場所から……?」
「違う」
違うのに。
「依頼は……完了だ」
短く言った。
「受けてない」
重要なポイント。
「だが、結果は出ている」
そう言われると、弱い。
「報酬は支払う」
「いらない」
ミリアが小声で言う。
「もらっときなさい」
セリスも頷く。
「無駄じゃないわ」
リィナは興奮している。
「師匠……やはり……!」
「違う」
結局。
袋を渡された。
「……面倒」
だが、中身は重い。
【生活最適化:価値最大化】
「……多いな」
明らかに、過剰。
グレンが一礼する。
「感謝する」
「してない」
していないのに、される。
「また依頼する」
「しない」
やめてほしい。
グレンは去っていった。
静寂が戻る。
「……終わった?」
「終わったわね」
ミリアが笑う。
「結局、何もしてないのにね」
「してない」
ルナが嬉しそうに言う。
「お兄ちゃん、かっこいい!」
「違う」
セリスが小さく呟く。
「これ、もう止まらないわね」
止まってほしい。
【省エネ成長:大幅上昇】
「いいね」
何もしないほど、うまくいく。
それでいい。
「寝る」
布団に倒れる。
外ではまだざわめきが続いている。
たぶん、全部俺のことだ。
「……知らない」
目を閉じる。
【次回:なぜか噂が街中に広がって、でも本人は寝ています】




