第11話:王(負債)の整理と、教皇庁への監査通知
「……あ、ああ……。そんな、馬鹿なことが……」
石床に崩れ落ちた、かつての王と聖女。
急激に老け込み、白髪の混じったシャーリー様を、国王陛下……いえ、エドワード様は助けることもできず、ただ震えながら見つめておられました。
闇の魔法という名の「超高利貸し」に魂まで差し押さえられた末路。実に、見通しの甘い投資判断の結果ですわ。
「騎士団長。……その方々を、地下の『整理室』へ。……あ、シャーリー様は医療費がかさみますので、その分はエドワード様の労働時間を三倍に増やして充当してくださいな」
「わ、私に……この私に、労働を強いるというのか! セラフィナ、私は貴様の父だぞ!」
衛兵に腕を掴まれながら、エドワード様が絶叫します。
わたくしは、扇子を優雅に閉じ、その哀れな男の瞳を真っ直ぐに見据えました。
「お父様。……わたくしの帳簿には、『家族愛』という名の勘定項目は存在いたしません。……存在するのは、『資産』か『負債』か、そのいずれかですわ。……そして現在の貴方は、わたくしにとって維持費ばかりがかかる『不良債権』。……せめて、死ぬまでにその身で負債の利子分くらいは稼いでいただかないと、わたくしの気が済みませんの」
「き、貴様……っ! 人の心はないのか!」
「あら。……人の心なら、幼い頃にお父様が『政略の道具』として売買された時に、どこかへ紛失してしまったようですわ。……お連れなさい」
無情な命令。騎士たちの足音。
かつての支配者たちが引きずられていく音を聞きながら、わたくしは広間の中心にある玉座の前に立ちました。
アラリック様が、音もなく背後に寄り添います。
「……オーナー。城内の掃掃は完了しました。……ですが、シャーリーの魔力回路に残っていた『署名』。……あれは、やはり教皇庁の秘匿術式です」
「ふふ。……教皇庁。……神の代理人を自称しながら、王家に闇の力を貸し付け、この国を実質的に裏から支配しようとした『真の債権者』……」
わたくしは、母から受け継いだ『世界の根抵当権』の証書を、月光に透かしました。
母が遺した記録によれば、この世界の魔力バランスを意図的に崩し、人々から『信仰』という名の搾取を続けている元凶は、聖都の奥深くに鎮座する教皇庁そのもの。
「アラリック。……わたくし、あまり好きではないのです。……自分では一ギルも稼がないくせに、他人の不安を煽って『寄付』を募る、宗教という名のビジネスモデルが」
「……ならば、解体しますか?」
「ええ。……ですが、まずは礼儀正しく『監査』から始めましょう。……教皇庁に対し、ルーンガルド王国の新オーナーとして、正式な『資産公開請求』と『税務監査』の通知を送りなさいな」
アラリック様が、楽しげに口角を上げました。
「宗教法人に対して『納税』を求めると? ……それは、宣戦布告と同義ですよ」
「あら、心外ですわ。……わたくしはただ、この国における教会の『免税特権』が、現在の財政状況に照らして不当であると指摘したいだけ。……三日以内に納得のいく返答がなければ、大聖堂そのものを『違法建築物』として強制撤去させていただきますわ」
わたくしの言葉に、広間に残っていた文官たちが、今度こそ腰を抜かしました。
神の家を差し押さえ、教皇庁を納税義務者として扱う。
前代未聞。……いいえ、この世界の歴史において一度も行われたことのない『神への不渡り』。
窓の外、夜明けの空が白み始めていました。
「……さあ、アラリック。……次は、聖都という名の巨大な『ブラックボックス』を開けに行きますわよ」
愛も、奇跡も、神も。
わたくしの前では、すべて適正な市場価値に置き換えられるべきなのです。
ふふ……。
教皇様。……貴方の神聖なる座、いくらで買い叩いて差し上げましょうか?
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ついに王家を完全に整理し、セラフィナ様の牙は「教皇庁」へと向けられました。
神への「税務監査」……これこそがセラフィナ様の真骨頂ですわね。
さて、次回。セラフィナ様の監査通知を受け、教皇庁がついに「聖騎士団」を動かします。
ですが、セラフィナ様にはさらなる「法的な秘策」があるようで……?
「教皇すらも債務者に変えるセラフィナ様、期待してます!」と思ってくださった方は、ぜひ評価やブックマークをよろしくお願いいたします。
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